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日立製作所 加治 慶光 篠倉 美紀/日立システムズ 畑田 尚美 藤井 俊一/元野球日本代表「侍ジャパン」監督 栗山 英樹氏
2023年7月21日、『サステナブルな地域創生とDX』をテーマに開催されたイベントの模様をお届けする。第5回は、引き続き「社会課題に向き合うマネジメントの知恵」をテーマに行われた第2部のトークセッション。モデレーターはLumada Innovation Hub Senior Principalの加治 慶光、ゲストは元野球日本代表監督の栗山 英樹氏。そして日立製作所と日立システムズの3名。最終回となるその3では、地域の課題解決をいかに持続させるのか。そして、地域創生をビジネスにつなげる難しさについてのディスカッションが展開した。

「第1回:夢をかなえるフィールド」はこちら>
「第2回:すべての基本は人作り」はこちら>
「第3回:社会課題に向き合うマネジメントの知恵 その1」はこちら>
「第4回:社会課題に向き合うマネジメントの知恵 その2」はこちら>
「第5回:社会課題に向き合うマネジメントの知恵 その3」

地域創生の持続可能性

加治
女川プロジェクトは今も一歩ずつ進んでいるわけですが、ここからはこのプロジェクトをどう持続させていくのか、そのために何が必要なのかという点にフォーカスしたいと思います。まずは藤井さん、いかがでしょう。

画像: 日立システムズ 藤井 俊一

日立システムズ 藤井 俊一

藤井
持続という視点から言えば、女川町の人たちが自分たちでやりたいことをやり続ける、自走できる状態にしていくことが必要だと考えています。そして自走するための方向性や仕掛けを、私たちのデジタルサービスが支えていければと思います。

加治
ということは、いつか藤井さんたちも女川町を去る時が来るかもしれない、そんなふうには思っておられますか。

藤井
そうですね。場合によってはそうになるかもしれないと思っています。でも私たちが作ったサービスを使っていただくことで、私たちは日立システムズとして女川町との関わりは継続できます。ビジネスという形で女川町との関わりを持続することは可能だと思います。

加治
ありがとうございます。そこでちょっと現実的な質問をしたいのですが、日立システムズとしてはこのビジネスをどんな形で続けていこうと思われているのでしょうか。これは畑田さんにお聞きします。

畑田
女川プロジェクトは本当に地域で使っていただける、地域の方がうれしいサービスを作るということが目的です。女川町で、地域の方のニーズをとことん突き詰めてサービスを作り上げる。その先に、この女川モデルを同じ課題を抱えるほかの地域に展開していく。日本の地域創生へとビジネスをスケールしたいと思っています。

加治
2年目に入って、ここから先はどんなことをされようと思っていますか。

画像: 日立システムズ 畑田 尚美

日立システムズ 畑田 尚美

畑田
今年は2つテーマがあります。1つは「活動人口」です。私たちもそうですが、地域のために何らかの活動をしてくれる人たちを「活動人口」と呼びますが、この「活動人口」をテーマにしたワークショップをやっています。町の方々と一緒に、「活動人口」を増やしていくために何ができるのか、その課題理解から入って、将来どういう町になりたいかというめざす姿を描いていく。そのあとに、どうデジタルで解決できるかというところを検討していくというワークショップです。

もうひとつは、先ほど藤井さんから説明のあった「山林」というテーマです。去年作り上げたサービスアイデアを、さらに磨く活動を続けています。

加治
この「活動人口」という概念について、少し補足しておきます。以前から人口の在り方として、「交流人口」「関係人口」「定住人口」という定義があります。「交流人口」というのは、観光客のように一時的にそこを通り過ぎていく人たちです。「関係人口」というのは、その地域にルーツがあったり、かつて住んでいたなど何らかの関係を持った人たちです。そして、実際に移り住んでしまう人たちが「定住人口」です。さらにそれに加えて、外から来ているのだけれどもその地域で情熱を持って活動している人たちに対し、「活動人口」という新しい定義ができました。この「活動人口」を増やすということが、今女川町が考えている戦略だということですね。

画像: Lumada Innovation Hub Senior Principal 加治 慶光

Lumada Innovation Hub Senior Principal 加治 慶光

ビジネスとしての可能性と壁

加治
デジタルサービスの投資効果として地域創生が見合うのかというトライアルは、まさにいろいろな企業や団体が全国で行っているところではないかと思います。その最先端にいる藤井さんは、どんな実感を持っておられますか。

藤井
地域創生がビジネスになるかどうか、というところですね。正直に申し上げて、今本当に苦労しているところです。地域の方がうれしいと感じるサービスが、そのままわれわれの事業性を持たせられるかというと、そこは一筋縄ではいかないなということが今の実感です。

一方で、こうして地域の方と一緒にサービスをつくり上げる中で、ほかの部署で検討している事業と連動させると事業性が持てるかもしれない。そんな光が見えていて、これからどんなビジネスモデルを作ることができるのか楽しみになってきてもいます。

加治
地域創生に飛び込んでみて、今は壁も可能性も感じている。そういうことですね。ありがとうございます。今日はご参加いただいた多くの方たちに、女川プロジェクトという活動の面白さや難しさなどを感じていただけたのではないでしょうか。

栗山さん、何か感じられたこと、感想などがありましたら、最後にひと言お願いします。

画像: ビジネスとしての可能性と壁

栗山
先ほども話しましたけど、やっぱり何でも「難しい」のです。ましてや地域創生という課題に対する答えなんて、簡単に出てくるわけはない。実際にこうやって皆さんが本当に命懸けで考えて、一生懸命に女川のためにやられていることも、そんなに簡単に町の人全員が「ありがとうございます」というふうにはならないでしょう。でもそれが当たり前で、できないと思ってしまえば何もできるようにはならないわけで、少しずつでもできると思って前に進んでいれば、いつか大きなご褒美が返ってくるかもしれません。

もうすぐ僕は地方に住む町のおっさんになりますから、今日勉強させていただいたことは栗山町に帰って町の人たちに話したいと思います。僕も北海道で地域のために動きますから、皆さんもそれぞれの場所でがんばってください。今日はこういった機会をくださり、本当にありがとうございました。

画像1: サステナブルな地域創生とDX
【第5回】 社会課題に向き合うマネジメントの知恵 その3

栗山 英樹(くりやま ひでき)

1961年、東京都生まれ。東京学芸大学を経て、1984年にヤクルトスワローズに入団。1989年ゴールデングラブ賞を獲得。1990年に現役を引退した後は解説者として活躍するかたわら少年野球の普及に努め、2002年には名字と同じ町名の北海道栗山町に同町の町民らと協力して少年野球場「栗の樹ファーム」を開設。2004年からは白鷗大学でスポーツメディア論などの講義を担当した後、2012年からは北海道日本ハムファイターズの監督としてチームを2度のリーグ優勝に導き、2016年には日本一に輝く。2021年、野球日本代表監督に就任。2023年、WBCで優勝。現在、北海道日本ハムファイターズプロフェッサー。

画像2: サステナブルな地域創生とDX
【第5回】 社会課題に向き合うマネジメントの知恵 その3

加治 慶光(かじ よしみつ)

株式会社 日立製作所 Lumada Innovation Hub Senior Principal。シナモンAI 会長兼チーフ・サステナビリティ・デベロプメント・オフィサー(CSDO)、 鎌倉市スマートシティ推進参与。青山学院大学経済学部を卒業後、富士銀行、広告会社を経てケロッグ経営大学院MBAを修了。日本コカ・コーラ、タイム・ワーナー、ソニー・ピクチャーズ、日産自動車、オリンピック・パラリンピック招致委員会などを経て首相官邸国際広報室へ。その後アクセンチュアにてブランディング、イノベーション、働き方改革、SDGs、地方拡張などを担当後、現職。2016年Slush Asia Co-CMOも務め日本のスタートアップムーブメントを盛り上げた。

画像3: サステナブルな地域創生とDX
【第5回】 社会課題に向き合うマネジメントの知恵 その3

篠倉 美紀(しのくら みき)

株式会社 日立製作所 DesignStudio Lead Design Reasercher 日立製作所にて、情報システムや建築機械等のデザインリサーチに従事。2017年、建設機械向けIoTクラウドソリューションを事業化。2019年より、顧客協創活動でデザイン思考を実践するとともに、人財育成を推進。2022年より、女川プロジェクトに参画。

画像4: サステナブルな地域創生とDX
【第5回】 社会課題に向き合うマネジメントの知恵 その3

畑田 尚美(はただ なおみ)

株式会社日立システムズ 金融事業グループ 事業企画本部 戦略企画部 部長代理
2004年より金融業界向け営業活動に従事。2017年より日立製作所のデザイン思考特別業務研修に参画。2019年より金融事業グループの事業戦略立案に従事。2021年より地域創生タスクフォースを運営、女川プロジェクトの立ち上げを担当。2022年より女川プロジェクトを開始、リーダーとしてプロジェクトを推進。

画像5: サステナブルな地域創生とDX
【第5回】 社会課題に向き合うマネジメントの知恵 その3

藤井 俊一(ふじい としかず)

株式会社日立システムズ 金融事業グループ 事業企画本部 戦略企画部 部長代理
2001年日立システムズに入社後。約21年間金融業界向け営業活動に従事。2021年、女川プロジェクトにおけるメンバー募集に立候補。2022年より宮城県女川町に移住し、女川プロジェクトを推進中。

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