「人と人とのマッチングで世のなかの困りごとを解決する」というテーマのもと、自ら会社を立ち上げることを選んだ角田氏。ITの知見もほとんどないなか、周囲の人の支えを受けながら、「ANYTIMES」のサービスインにこぎつけた。軌道に乗りだした会社を経営しながら、その先に見えるのは、幼い頃に描いた人助け・街づくりの夢――。ITを駆使し、人と人をつなぎながら、若き起業家の目はそのときを見据えている。

「前編:人の「できること」をつなげば、世の中はもっと素敵になる」はこちら >

リリースから2年後に、一度ゼロからつくり直す

会社を登記した時点では、事業計画はあったものの具体的なプロダクトはなく、文字通りゼロからのスタートだった。しかし、会社に勤めながら準備を進め、手応えを得たところで起業するという選択肢は、まったく頭になかったという。

「すでに存在するビジネスモデルをベースにした事業であれば、プロダクトの開発と起業準備を並行する方法もありだと思います。でも『ANYTIMES』は、私が探した限り、類似のビジネスモデルがほとんど見当たりませんでした。できるだけ早くアイデアを形にするため、自分のリソースをすべてANYTIMESに集中したかったんです」

立ち上げ当初のメンバーは角田氏を含めて2人。ITに詳しい人はいなかったため、クラウドソーシングサービスを使い、世界中のデザイナーやエンジニアに開発をアウトソースする体制でアプリとWebサイトを立ち上げた。

ところが、徐々に問題が浮き彫りになっていく。大勢のアウトソーサーが部分的にシステムをつくっていった結果、どこを・どう触れば・どう改善できるのかといった全容が把握できない状態になっていたのだ。サービス開始から2年間、幾度も改修を行いながら何とか運用してきたものの、いよいよ立ち行かない状況が近づく。そこで経営者である角田氏は、大きな決断を下す。

「2015年9月、既存のアプリやWebサイトはすべて破棄し、開発体制も内製方式に切り替えて、ゼロから再出発することにしたんです。これはクラウドソーシングという仕組みのせいではなく、自分たちに十分なIT知識がないまま、顔の見えない外部スタッフに開発を丸投げしていたことが原因でした。決断して、新たにシステムを構築し、再リリースにこぎつけたのが2016年2月。非常に大変でしたが、この経験から、人と人とのコミュニケーションや、信頼関係を築くことの大切さなど、ものづくりにおいて大切なことをたくさん学びました」

画像: リリースから2年後に、一度ゼロからつくり直す

サービスを受ける側と提供する側、双方の満足度

一時はそんな危機に直面したものの、多くのニーズに支えられながら、その後ANYTIMESは順調に利用者数を伸ばしている。提供される/依頼できるサービスの種類はさまざまだが、最も多いのは掃除・料理などの家事関連だ。ほかにも、DIYの組み立てや修理、ペットの世話、育児や介護、「算数を教えます」といった習い事などが利用者の人気を集めているという。

また同社には利用者の声も届いている。例えば、料理が好きなので「作り置きします」というサービスチケットを販売したら、大勢の人に購入してもらえたという30代の主婦。相手に喜んでもらえたことはもちろん、自分の好きなことをお金に換えられたことが非常に嬉しかったという。

20代・女性のある利用者からは、こんな声も届いた。得意な料理をいつか仕事にしたいと思っていたが、やれるか自信がなかった。そんなとき、ANYTIMESで料理代行のサービスを提供したところ、大勢の人に高く評価してもらえた。自信を得て、ケータリングの会社を起業し、現在は順調に売り上げを伸ばしている。起業のきっかけになる場を提供してくれてありがとう、というものだ。

画像1: サービスを受ける側と提供する側、双方の満足度
画像: 料理、風呂掃除といった家事の手伝いなど、専門業者に依頼するまでもない、身の回りの“ちょっとしたこと”を気軽に解決できる。

料理、風呂掃除といった家事の手伝いなど、専門業者に依頼するまでもない、身の回りの“ちょっとしたこと”を気軽に解決できる。

「先(前編)に紹介した通り、当社の事業目的は3つありますが、まずは1つ目の『日常の手助け需要に応える』が優先で、2つ目の『多様な働き方の提案』は少し後になってからめざすものと考えていました。それが、まさかこんなに早く、働き方に関する喜びの声をいただけるとは。日本には、自分のスキルを生かしたいと考える人が想像以上に大勢いて、ANYTIMESが、微力ながらもそうした人たちの手助けになれている。これは、嬉しいサプライズでした」

画像2: サービスを受ける側と提供する側、双方の満足度

めざすのは、人同士の“弱いつながり”

さらに現在は、3つ目の事業目的である「地域のつながりを取り戻す」という方向性にも力を注いでいる。

直近のデータでは、ANYTIMESの利用者層は20代後半から40代前半が中心。ただ、スマートフォンが若者世代から親世代、祖父母世代へと普及していったように、ANYTIMESも今後少しずつ高齢者層へ普及していけば、より多様な使われ方が生まれてくると角田氏は見ている。その過程で、人同士をつなぐ「ハブ」的な役目を果たしていくことが、ANYTIMESのミッションだと考えている。

「地域のつながりを取り戻すといっても、これは昔のように、ご近所同士が家族のように関わりあって暮らすということではありません。核家族や単身世帯の多い現在の社会では、そうした共同体を再現するのは難しいし、そもそも望まれていない面もあるからです。私たちが実現したいのは、手伝いが必要なときや困ったときに役立つ緩やかなつながり、つまり“弱いつながり”です。普段は何の関わりもないけれど、必要なときには誰かが助けてくれる――。そんな感覚を持てるようになるだけで、暮らしの安心は、大きく高まります」

こうした同社のスタンスは、同じ思いを持つ地方自治体からも注目を集めており、サービス開始直後からさまざまな打診が相次いでいるという。角田氏によれば、これも当初はしばらく先のことだと想定していた動きであり、嬉しいサプライズの1つだった。

宮崎県、長野県をはじめ各地の自治体と連携

すでに提携が具体化した例もある。宮崎県日南市では、暮らしの困りごと解決を依頼するためのWebサイトを、ANYTIMESのプラットフォームを使って作成。ここで申し込むと、日南市のシルバー人材センターやファミリー・サポート・センターにつながり、適した人材が派遣される仕組みだ。

また、長野県南佐久郡の川上村では、文化・制度・インフラのスマート化を推進する「KAWAKAMI SMART PROJECT」に参加。こちらもANYTIMESのプラットフォームを使って、主に女性が新しい働き方と出会うためのWebサイトを設置した。川上村は長年、高いスキルを持っていても女性がなかなか活躍しにくいという課題を抱えていた。そこで、家事・育児などのシェアを促進し、女性が自分のやりたいことに前向きに取り組める仕組みを用意したのである。

「ANYTIMESをどう使うかは、自治体さまの課題によってもさまざまです。より課題解決に直結するような使い方を、これからも一緒に考えながら、ご提案していければと思っています」

画像: 宮崎県日南市向けに立ち上げたタイアップページ。

宮崎県日南市向けに立ち上げたタイアップページ。

画像: 長野県川上村で、アプリの使い方などのレクチャーを行っている様子。

長野県川上村で、アプリの使い方などのレクチャーを行っている様子。

世界をめざす前に、日本でやるべきことがある

角田氏の座右の銘は「愚公移山(ぐこういざん)」。中国の故事に由来する言葉で、たとえ無理だといわれても、愚直に、一心に、ものごとに向き合い努力し続けていれば、山が動くように道が開けるという意味だ。

事業目的に掲げた通り、日常の困りごとを解決し、新しい働き方を生み、やがて地域の“弱いつながり”を回復していくため、角田氏はこれからも「愚公移山」を貫くだろう。さらにその先には、子どもの頃からの夢だった途上国の街づくり支援がある。ANYTIMESのプラットフォームは「仕事」「人」といったものを軸とした仕組みのため、あらゆる国に応用が可能。そのため角田氏は、将来的なグローバル展開も視野に入れながら、サービスのさらなるブラッシュアップに努めている。

「ただし、今はまず日本国内の困りごとを解決することに力を注ぎたいと思っています。実は、大学以降、社会人になってからも海外には頻繁に足を運び、実際に苦しい環境で暮らす人々の姿を見てきました。そこで感じたのは、確かに物質的には恵まれていないし、不便なことも多いかもしれないけど、そこで暮らす人々は不幸に見えないということでした。少なくとも私には、むしろ日本人よりも生き生きと輝いて見えたんです。もし、その原因が、日本が経済的に発展してきた過程で、失ってしまったものにあるとしたら――。もちろん、夢を追いかけることは止めませんが、まだまだ日本で、私たちがやれることは山ほどあると感じています」

画像: 角田千佳 -Chika Tsunoda- 1985年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後の2008年に野村證券株式会社に入社。2010年に株式会社サイバーエージェントへ転職し、関連会社でPRプランナーとして企業のPR事業に携わる。2013年「豊富な幸せの尺度を持った社会の実現」をめざし、株式会社エニタイムズを創業。同年末、日常のちょっとした困りごとを、簡単に依頼・請負できるスキルシェアサービス「ANYTIMES」をリリースする。

角田千佳 -Chika Tsunoda-
1985年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後の2008年に野村證券株式会社に入社。2010年に株式会社サイバーエージェントへ転職し、関連会社でPRプランナーとして企業のPR事業に携わる。2013年「豊富な幸せの尺度を持った社会の実現」をめざし、株式会社エニタイムズを創業。同年末、日常のちょっとした困りごとを、簡単に依頼・請負できるスキルシェアサービス「ANYTIMES」をリリースする。

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