寄稿 岩倉使節団が遺したもの—日本近代化への懸け橋 連載に寄せて
【プロローグ】いま、なぜ「岩倉使節団」なのか?
「未来は歴史の中に」を問い直す
現在のコロナ禍にあって思い浮かぶ一人の人物がいる。長与専斎。「衛生」の語をつくり公衆衛生を学びとり猛威を振るったコレラと格闘した彼の原点は、医者としてすでに一家をなしながらもさらに深く西洋医学を学びたいと熱望して参加した岩倉使節団にある。
日本近代化の起点というべきこの「岩倉使節団」の派遣から、今年がちょうど150年目にあたる。この使節は幕末に徳川将軍が派遣したいくつもの使節とは名実ともにあきらかに違っていた。「将軍の使節」は幕臣の官僚が大副使を占め内容も儀礼的なものが多かった。しかし、この使節はまさに「天皇の使節」であり、右大臣外務卿の岩倉具視が大使、参...