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スマートフォン上で授乳室やおむつ交換台が検索できるマップアプリと、「完全個室型のベビーケアルーム」というこれまでにない製品によって、子育て中のお母さんをサポートしているTrim。ニッチな事業領域でありながら、利用者の声を吸い上げることで着実に成長している。はじめに、Trim創業者で、代表取締役の長谷川 裕介氏に事業の概要やめざすことを聞いた。

子育て中のお母さんが快適に過ごすお手伝いを

未来の社会を担う子どもたち。その健やかな成長には、母親・父親をはじめとする家族の支えが不可欠だ。ただ、近年は核家族化が進み、祖母や祖父の手助けが期待できない環境で、子育てする親が増えている。共働き世帯やシングルマザーも多く、そうした人たちにとって、子育ては多大な苦労をともなうものになっている――。いつの世も、子育ては決して簡単なことではないが、現在は人口構成や社会の変化にともない、昔とまた違う難しさが表出している時代といえるだろう。

そんな中、“All for mom. For all mom.” というコーポレートミッションの下、事業を展開するのがTrimである。

同社は、子育てをするすべてのお母さんに「安心と快適を届けること」を目標に、大きく2つのサービス/製品を提供している。1つは、授乳室とおむつ交換台の検索アプリ「Baby map」。もう1つは、授乳やおむつ交換、食事といった、乳幼児の世話全般に使える個室型のベビーケアルーム「mamaro」だ。

「子育て中のお母さんを取り巻く現在の状況は、バランスがとれていないと私は感じています。例えば、子育てはどうしても女性の負担が重くなり、出産後、思うように職場復帰できない人が大勢います。また、商業施設などにある授乳室も、お母さんにとって快適とはいえないところが多くあります。子育て中のお母さんたちが、少しでも快適に毎日を過ごせるように、バランスを調整したい。Trimという単語には、『船や飛行機がバランスをとって進むさま』という意味がありますが、この言葉を社名にしたのもそんな思いからでした」と長谷川氏は話す。

画像: Trim株式会社 代表取締役の長谷川 裕介氏

Trim株式会社 代表取締役の長谷川 裕介氏

実際、小さな子どもを持つお母さんにとって、授乳やおむつ替えなどは外出時の大きなハードルとなる。目的地までの移動経路に立ち寄れそうな授乳室はあるか。その授乳室には、どんな設備があり、どんなことが行えるのか――。これらのニーズに応える情報を提供するのが、Baby mapである。

特徴は、CGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)として、お母さんたちが投稿した情報をみんなでシェアする点にある。商業施設などの授乳室、おむつ交換台の有無や、設備の使い勝手、清潔感などに関する利用者のクチコミが、別のお母さんにとって有益な情報になる。投稿が集まれば集まるほど、マップは便利なものになっていく。

「現在までにアプリのダウンロード数は35万件を超えています。北米、欧州、アジアなど世界33カ国の情報も網羅されており、出張先や旅行先での検索も可能です」

授乳室とおむつ交換台の検索アプリ「Baby map」

不満、不便を解決する答えが「個室」だった

もう1つのmamaroは、箱型の物理的なスペースを提供する製品だ。完全個室型のベビーケアルームとして、商業施設などに展開・設置されている。

横幅180cmと奥行き90cm、つまり畳一畳分のスペースがあれば、どこにでも設置できる。室内にはおむつ交換台も設置されており、ひと通りのベビーケアが行える。製品化から約3年、現在は全国で150台以上の稼働実績がある(※)。曜日などによる変動はあるが、1施設で月間400~500回の利用があるという。

「お母さんたちの評判も上々です。『使いやすい』『個室なのでまわりを気にしなくて済むのはありがたい』といった声が届いています」と長谷川氏は語る。

画像: 「mamaro」の外観

「mamaro」の外観

画像: 「mamaro」の内観

「mamaro」の内観

また、授乳やおむつ交換だけでなく、寝かしつけや、子どもが服を汚したときに着替えをしたり、お父さんが離乳食をあげる場所として使われたりするケースも多いという。つまり、これまで公衆の場では難しかった、諸々のベビーケアが行えるスペースとしてmamaroが活用されているわけだ。

「一般の授乳室には男性が入れないエリアがあるので、どうしても『お母さんが入る部屋』というイメージがあります。これが、お母さんに負担が偏る要因の1つになっていたのですが、完全個室型のmamaroなら両親どちらでも気兼ねなく利用できます。お出かけ先における家族のプライベート空間になれるところは、mamaroならではだと考えています」

さらにmamaroは、設置する施設側にもメリットを生む。

「例えば、小さな子どもを持つ家族が来店しやすくなれば、集客効果につながります。コンパクトで簡単に設置できるという特性を生かし、フードコート内に設置した施設もあり、食べ物をこぼした際の着替えなどがすぐに行えるため、非常に好評です。また、商業施設には、mamaroの毎月の利用状況や、利用者へのアンケート結果などの情報もご提供しています。私はBaby mapもmamaroも、お母さんと施設の両方にメリットをもたらすものであるべきだと考えています。今後もより多くの人に使ってもらえるような仕組みをめざし、さらに改善・改良を続けていきます」と長谷川氏は語る。

デジタルとリアル、両方の世界で、お母さんに役立つソリューションを提供するTrim。Baby map、mamaroは、令和の時代を生きる子育て世代にとって、欠かせないサービス/製品になっていく可能性を秘めている。

※ 2020年3月現在

画像: すべての「お母さん」へ、感謝のギフトを贈りたい
【第1回】お母さんを取り巻く環境の「バランス調整役」に

長谷川 裕介
1983年神奈川県横浜市生まれ。大学卒業後、広告代理店でコピーライター、プランナー、クリエイティブディレクターとしてキャリアを築いた後、医療系ベンチャーへ転職。CIO、新規事業責任者としてアプリ開発などを行う。2015年、「子育てをする、すべてのお母さんたちが快適に過ごせる社会の創造」をめざしてTrimを設立。授乳室、おむつ交換台の検索アプリ「Baby map」、完全個室型ベビーケアルーム「mamaro」を展開している。

「第2回:根底にあるのは「お母さん」という存在への感謝」はこちら>

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