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READYFOR株式会社 CEO 米良はるか氏 / 株式会社 日立コンサルティング 代表取締役 取締役社長 八尋俊英
「短期の売上よりも、ミッションを遂行することが大事」と言い切る米良さん。クラウドファンディングでサポートするプロジェクトも「想いの乗ったお金の流れ」を必要とするものばかりだ。そうしたプロジェクトが集まってくるのは、READYFORがミッション・オリエンテッドな企業だからである。しかし、その新しい企業の姿こそが、ポストAI時代のサービス基盤になり得るのかもしれない。

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短期的な儲けよりミッションの遂行

八尋
前回、パートナーシップを阻むような組織の壁を取り除くことも、米良さんたちの仕事の一部だというお話がありました。ただ、実際に大企業や行政の中には、ルールとして、規模の小さいベンチャーを調達先にできない場合もありますね。

米良
確かに、入札でそういう制約がかかることはありますが、当社ではすでに大企業も数多く含む200〜300社とアライアンスを組んでいます。その経験からは、あまりそういう不自由さを感じたことはありません。そもそも、クラウドファンディングは新しい仕組みですから、最初は時間がかかるのは当然だと思います。

画像: 短期的な儲けよりミッションの遂行

皆が必要と思っていることはすでに課題が顕在化しているわけで、いわばレッドオーシャンです。そういう事業をあえて私たちがやる必要はない。むしろ1割くらいの人が必要だと感じていて、9割の人はよくわからない、というくらいの課題に取り組むべきだと思っています。そういう課題に対して、PDCAサイクルの中で試行錯誤しながら自分たちでノウハウを蓄積していくほうが、他社の参入障壁にもなります。「Readyfor」にご応募いただくプロジェクトもニッチな社会課題解決に挑むプロジェクトが数多くあります。

READYFORはミッション・オリエンテッドな会社なので、会社のメンバーを結びつけている核もビジョン・ミッションにあります。そこがブレると、目的を見失ってしまい、社員も疲弊してしまう。短期の売上利益は、私たちにとってはあまりモチベーションにはならないということです。

ポストAI時代のサービス基盤へ

八尋
ミッション・オリエンテッドというのは、やはり尊敬されている松尾豊先生の影響もあるのでしょうね。2018年から松尾先生がREADYFORのアドバイザーに就任されるなど、経営体制の拡充・強化を図ってこられましたが、先生は株主としての期待感というよりも、米良さんたちの活動を純粋に面白く思っていらっしゃるように感じます。

画像: ポストAI時代のサービス基盤へ

米良
松尾先生は本当に自分たちの手で未来をつくりたいと思っている方で、小さいことはやるな、社会に大きなインパクトをもたらすことだけを徹底的にやろうとおっしゃっています。その中で特にめざしているのが、ポストAI時代のサービスづくりです。

将来、AIが進展すれば、人間はいまの労働から解放されて、使える時間がうんと増えるでしょう。では、何をして生きていくのかと考えたとき、現状ではその問いに答えられる人は少ないのではないでしょうか。

そのとき、ポジティブなエネルギーを持って、やりたいことを実現するための基盤として、私たちのクラウドファンディングのサービスを使ってもらえたらいいなと思っています。活動に参加することによって、自分が生きていくには困らないくらいのお金が回るとか、生きがいを見出せるとか、それぞれの生きる目的を果たすことに役立ててもらえたらいいですね。

お金の流れが変われば、世の中は大きく変わる

八尋
ポストAI時代が到来しても、クラウドファンディングのような仕組みがあれば、最終的にはお金が回っていくというわけですね。

米良
そもそも、現在のアメリカ型の株式市場では、四半期ごとの業績が評価基準になっていますよね。株主もその枠組みの中で企業を評価します。

一方、Amazonが長年にわたり最終赤字を計上していても株主の評価が下がらなかったのは、Amazonが何に資産を積み上げているかを、株主がしっかり理解し、その投資が必要であると判断してきたからでしょう。

Amazonのように新しいお金の流れをつくり、社会全体の潮流を変えつつあることは、面白い取り組みだと思っています。実際に、従来とは違う市場評価の指標をつくる動きも出てきていますね。

暗号資産(仮想通貨)にはまださまざまな課題がありますが、アイデア一つで、ICO(Initial Coin Offering=新規暗号資産(仮想通貨)公開)により何千億円ものお金を集めることができること自体、すごいことです。ルールづくりを進めていけば、暗号資産(仮想通貨)もお金の流れを変える新たな手段として重要な機能を果たしていくでしょう。

画像: お金の流れが変われば、世の中は大きく変わる

八尋
一方で、ポストAI時代が到来すると、既存の産業構造は本当にガラッと変わってしまい、労働集約型の産業はいらなくなってしまうかもしれません。資本主義的な規模の大きさだけに依存してきた企業などは、危機的な状況に陥るようにも思います。そうなれば、まさにREADYFORのような企業の出番でもあるわけですが。

米良
AIで皆が暇になって、何をしたらいいかわからなくなったら、それこそ革命が起こるかもしれません。どうせ革命を起こすのなら、ポジティブにやりたいことを実現したり、皆で結託して何かを応援したりしたほうが楽しいのではないでしょうか。そのために我々の活動が力になれたら嬉しい限りです。

(取材・文=田井中麻都佳/写真=秋山由樹)

画像1: クラウドファンディングで未来をつくる
その3 ポストAI時代のサービス基盤として

八尋俊英

株式会社 日立コンサルティング代表取締役 取締役社長。中学・高校時代に読み漁った本はレーニンの帝国主義論から相対性理論まで浅く広いが、とりわけカール・セーガン博士の『惑星へ』や『COSMOS』、アーサー・C・クラークのSF、ミヒャエル・エンデの『モモ』が、自らのメガヒストリー的な視野、ロンドン大学院での地政学的なアプローチの原点となった。20代に長銀で学んだプロジェクトファイナンスや大企業変革をベースに、その後、民間メーカーでのコンテンツサービス事業化や、官庁でのIT・ベンチャー政策立案も担当。産学連携にも関わりを得て、現在のビジネスエコシステム構想にたどり着く。2013年春、社会イノベーション担当役員として日立コンサルティングに入社、2014年社長就任、現在に至る。

画像2: クラウドファンディングで未来をつくる
その3 ポストAI時代のサービス基盤として

米良はるか

READYFOR株式会社 創業者 兼 代表取締役CEO。1987年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。2011年に日本初・国内最大のクラウドファンディングサービス「Readyfor」の立ち上げを行い、2014年より株式会社化、代表取締役 CEOに就任。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出、日本人史上最年少でダボス会議に参加。現在は首相官邸「人生100年時代構想会議」の議員や内閣官房「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進室」専門家を務める。

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