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女優、歌手 ナタリー・エモンズ氏/株式会社日立製作所 理事 システム&サービスビジネス統括 本部CSO 松原康範
日本での日々の生活をアーティストとしての視点で観察し、日本の社会や文化を表現することで、日本とアメリカの架け橋になれればと語るナタリー・エモンズさん。歌や映画の創作活動にも取り組むナタリーさんに、さまざまなことに挑戦するためのモチベーションについて語っていただきました。

「第1回:日本文化への思い」はこちら>
「第2回:異文化コミュニケーションの肝」はこちら>

共感する心と経験を通した創作を毎日の日記のように記す

松原
自分で感じたことを、創作を通じて誰かに伝えたいということですね。ナタリーさんは、女優や歌手活動をされていますが、映画も創ってみたいと考えていらっしゃるのですか?

ナタリー
はい。将来はぜひ映画も創りたいですね。脚本も書いてみたいです。「日本遺産」の番組の尾道の回で、ラムネ工場に行きました。そこでは昭和に製造されたビンをずっと使っているのですが、そのビンはもう製造されていません。なので、その場でラムネをいただいて、またビンを回収して再利用しています。ラムネの味がとても美味しくて、しかもレトロな雰囲気の中でみんな一緒に古いビンでラムネを飲んでいる感じが、ちょっと不思議でした。そういうシーンを見ていて、ショートムービーにしたら面白いのではと思ったのです。みんなが古いラムネのビンでラムネを飲んだ瞬間に、タイムスリップしてしまうみたいな…。どうです? 面白そうでしょ?

松原
なるほど。ナタリーさんは、日常生活の中でもそういうふうに、自分や周囲をアーティストとしての視点で見ているので、どんな環境に入っていっても冷静に状況を見ることができるのかもしれませんね。それが、周囲の人への思いやりになったり、共感になったりするのだと感じます。それは、創作活動だけなく、周囲とのコミュニケーションにもたいへん大切なことですね。

アーティストとしての活動では、ナタリーさんはこの4月にコンサートを開かれましたね。私も行きました。

ナタリー
えー、それは嬉しいです。ありがとうございます。

松原
コンサートでは、日本の曲もたくさん歌われていました。最初にいきものがかりの「さくら」でしたか。あのオープニングは、かなり考えられた演出だったと思います。日本では、オープニングで観客がすぐに歓声を上げて、歓迎の意思表示をしたりしません。ナタリーさんのコンサートでは、静寂の中アカペラで入られたから、聴いている人たちもすごく静かにして聴いてしまうわけですが、演奏者からしたら、客席の手ごたえが感じられなくて不安になったりしませんか? 

ナタリー
いいえ、そういう点で不安にはなりませんでした。ただ、コンサートの前はどのくらいお客さんに来てもらえるか分からなかったので、開催するまでは不安で、とても緊張していました。でも、会場に来てくれた人たちは、みんな笑顔でサポートしてくれて、家族みたいに感じて安心しました。

松原
ナタリーさんのオリジナル曲も披露されていましたが、どういう時に曲が生まれるのでしょうか。

ナタリー
私は、毎日の日記みたいに曲を創ります。その日経験したことや、その日の気持ちなどを、日記に記すようにして創っています。でも、もちろん経験が全部ストレートに曲になるわけではありません。

松原
それは分かるような気がします。生の経験や気持ちではなくて、ナタリーさんの中でいくつかフィルターを通した創作として曲ができあがるわけですね。そこでもナタリーさんのアーティストとしての視点があるから、大勢の人が共感できる美しい音楽になるのだと思います。

ナタリーさんは、ジブリ映画のファンとも伺いました。ジブリの中ではどの作品が一番のお気に入りですか?

ナタリー
どの作品も好きですが、なかでも「千と千尋の神隠し」が素敵だと思います。あの大きな銭湯の色彩感覚などは、アメリカにはありません。はじめて日本に来た時に、あの映画と同じような色彩感覚が街の中にあふれているので、ほんとうにワクワクしました。

画像: 共感する心と経験を通した創作を毎日の日記のように記す

私の夢は日本とアメリカをつなぐこと

松原
お話を伺っていると、好奇心を持っていろいろなことに挑戦されているようなので、日本に来てホームシックにかかったりしなかったのでしょうね。

ナタリー
そうですね。最初から平気でした。大阪に初めて来た時は、日本の文化とか食とか、見る物がすべて新鮮で、わーすごい、経験しなくちゃと思っていて、毎日が忙しかった。部屋の中で寂しがっている暇がなかったです(笑)。私は、子どもの頃から冒険がしたかったのです。子どもの頃は、将来、アクションアドベンチャー映画で有名なインディアナ・ジョーンズか女優になりたいと思っていました。いろいろな所に旅行をして、各地の物語をたくさん知って、冒険で経験したことを新しい物語にして、創作活動を通じて表現するような人に成りたいと思っていました。

松原
それでは、日本でいろいろな場所に行き、いろいろな体験をして、子どもの頃の夢がけっこうかなっているわけですね。日本以外にもいろいろな国に行ってみたいのでは?

ナタリー
日本のいろいろなところに行くことができましたが、まだ日本について知らないことや理解できていないこともたくさんあります。ですから、世界のいろいろなところに行く前に、まず日本のことをしっかりと理解して、日本の社会や文化の中に入っていきたいです。

松原
それは嬉しいですね。ナタリーさんが日本のことをよく理解してくれることで、結果としてアメリカなど海外にも日本のほんとうの姿が伝わっていくと思います。ですから、日本を理解して、日本の社会に参加したいという気持ちは、たいへんありがたいと思います。日本とアメリカの間をつなぐという役割を果たしてもらえます。

ナタリー
日本とアメリカの間をつなぐというのは、私の夢です。

松原
ナタリーさんから、日本の人へのメッセージは何かありますか?

ナタリー
日本には、良いところ、素晴らしいところがいろいろあります。たとえば、神社やお寺などは、日本の人は子どもの頃から触れていて、当たり前に感じているかもしれませんが、細かいところまでは、よく見ていなかったりするのではないかと思います。よく見てみると素晴らしい点がたくさんあります。そういう点に、もう一度目を向けてもらうと、新鮮な発見がいろいろあるのではないかと思います。ただ、東京など都会の生活では、みんな忙しく動いています。そういう中で、ちょっと立ち止まって、周りを見てほしいと思います。

松原
おっしゃる通りですね。日ごろ触れていて、よく知っていると思っていることでも、海外の人に説明しようとすると、自分でもよく理解していなかったり、ということが往々にしてあります。自分たちの文化や伝統を見直すことで「再発見」があるでしょうね。

ナタリー
私が、日本のことを素晴らしいと言うと、日本の人はどこにそんな良さがあるんだ、どこが好きなのかと不思議がります。でも海外から見ると魅力的なところがたくさんあります。アメリカでも、日本には行ったことがないけど、「日本、カッコいい」と憧れを持っている人はたくさんいます。日本の人は、そこに気づいて、自信を持ってほしいですね。

画像: 私の夢は日本とアメリカをつなぐこと
画像1: 心から認め合えば文化の違いを超えた絆が生まれる
【第3回】アーティストのまなざしで日米の架け橋に

ナタリー・エモンズ

アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴ出身。2010~2013年 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでシンガー、ダンサー、MCとして活動、1日4,000人以上が鑑賞に訪れるショー『ユニバーサル・レインボー・サーカス』ではリングマスター役(主役)を演じ、数々の賞を受賞。その後、ジブリ映画のテーマ曲をカバーした動画がYahoo! JAPANに掲載されるなど話題となる。NHKワールドの歌番組"We Love Japanese Songs"では司会も務めた。現在、毎週日曜放映の「じょんのび日本遺産」(TBS)ほか、多数のテレビCM、TV番組に出演。シンガーソングライターとしても活動中。

画像2: 心から認め合えば文化の違いを超えた絆が生まれる
【第3回】アーティストのまなざしで日米の架け橋に

松原康範(まつばら・やすのり)

1984年 株式会社 日立製作所入社、2005年 営業企画本部 企画部 担当部長、2009年 情報・通信グループ 金融システム営業統括本部 ビジネス企画本部長、2012年 営業統括本部 営業企画本部長、2016年 ICT事業統括本部 経営戦略統括本部長、2017年 システム&サービスビジネス統括本部 経営戦略統括本部長、2018年 理事/システム&サービスビジネス統括本部CSO

「第4回:大切なのはコネクションとコミュニケーション」はこちら>

シリーズ紹介

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

協創の森から

社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。

新たな企業経営のかたち

パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。

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各界のビジネスリーダーに未来を創造する戦略を聞く。

経営戦略としての「働き方改革」

今後企業が持続的に成長していくために経営戦略として取り組むべき「働き方改革」。その本質に迫る。

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日本を元気にするイノベーターの、ビジョンと取り組みに迫る。

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マーケティングにおける「デジタルシフト」を、いかに進めるべきか、第一人者の声や企業事例を紹介する。

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私たちの仕事や働き方の発想を変える、膨らませるヒントに満ちた偉才たちの仕事術を学ぶ。

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