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「組織の中のチーム力-その2 横隊編成と縦隊編成。」はこちら>
「組織の中のチーム力-その3 理想のチームは『大脱走』。」はこちら>

映画のたとえでいうと、『12人の怒れる男』という、50年代のアメリカ映画なのですが、これも絶対に観て損はない名作です。

※『12人の怒れる男』:1957年制作、シドニー・ルメット監督

ある刑事裁判で12人の陪審員団が、チームとして、ある殺人事件について有罪か無罪かの判断を下すまでの相互作用のプロセスを濃厚に描いた密室劇です。

「12人の怒れる男」っていうくらいなので、もうバトルして、意見を闘わせる。そこに、自生的にリーダーが現れる。彼が本当に強いリーダーシップで、それは建設的な、真実に迫る議論の場を作っていく。みんながストレートにもうガツンガツンやっていくうちに、最終的により良いディシジョン(判決)に導かれていく。これ、やっぱり無罪じゃないのっていう、より正しいと思える結果が出たっていう、これもひとつのチームワークの物語なんです。

その中で、すごく象徴的で、僕がいいなと思うラストシーンがあります。

「ということで無罪の結論が出ました」で裁判が終わる。陪審員団はその議論のために匿名で招集されているだけなので、終わったらみんな解散して家に帰るわけです。陪審員のみんながバトルをやってた小部屋から出てきて。そうすると、一連のプロセスの中で、一番、何ていうのかな、肝胆相照らした二人がいるんですけど、この二人が出てきたときに裁判所の出口でちょっと会話するんですね。

まず一方が口を開きます。「名前は?」。それまで、名前も教えていないんですよ。「名前は?」と尋ねると、相手が「デービスです」。で、「マカードルです」と返す。お互い、名前だけ言って、何か話を続けようと思うんですけど、ちょっと間を置いて「ソー ロング」と言って別れるんですよ。お互い違った方向に歩いて行く。それがエンディングなんです。

僕は、そのシーンが「いいチーム感」を出しているなと思って。

みんなで力を出し合って、それで、成果を出す、もしくは失敗してもいい。終わったら「じゃあね」で、もうその先の人間関係がない。あるかもしれないけれど、それが何か、必要な条件になっていないっていうのが、僕の考えるいいチームです。

これは良し悪しというよりも単なる僕の個人的な好き嫌いなのですが、僕は同窓会とか同期会とか、そういうのにあまり行かない方です。たまたま一時同じクラスにいただけ。チームって何かそういうものとは違うんじゃないかなというふうに思うわけです。

かなり僕のバイアス(偏り)が入っているのですが、あっさりと解散して、後は関係ないと。多分、それぞれの記憶の中に、ああ、あのときは、よくやったなとか、あいつは頼りになったなとかはあるんだけど、それをぐじぐじと引きずらない。人間は記憶によって生きているわけで、記憶が残ればそれで十分。そういうのが、僕は好きなんですね。

画像: 組織の中のチーム力-その4
ソー ロング…

楠木 建
一橋大学ビジネススクール教授
1964年東京生まれ。幼少期を南アフリカで過ごす。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了(1992)。一橋大学商学部専任講師、一橋大学商学部助教授、一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授、2010年より現職。
著書に『「好き嫌い」と才能』(2016、東洋経済新報社)、『好きなようにしてください:たった一つの「仕事」の原則』(2016、ダイヤモンド社)、『「好き嫌い」と経営』(2014、東洋経済新報社)、『戦略読書日記』(2013、プレジデント社)、『経営センスの論理』(2013、新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010、東洋経済新報社)などがある。

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