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  • 協創事例
  • オークマと日立の協創で、多品種少量での
    高効率生産を実現する次世代ファクトリー

    2017-11-22

    マスカスタマイゼーション時代の先進モデルを確立したい

    世界ではIoT、ビッグデータ、AI*1(人工知能)、知能化技術などを活用し、生産革新に向けた取り組みが進められており、なかでも超多品種少量生産においては大量生産並みの生産性を実現するマスカスタマイゼーション*2 に対応する次世代ファクトリーの構築が進展しています。

    大手工作機械メーカーのオークマ株式会社(以下、オークマ)は、工作機械の主要な基幹技術を自社開発する徹底した技術志向で知られています。工作機械製造は多種多様な顧客の要求にきめ細かく対応する超多品種少量生産の典型で、数千点から数万点にも及ぶ部品の加工・組み立て製造を行っています。

    次世代のモノづくりプロセスの革新をめざすオークマと日立は、IoT活用によるマスカスタマイゼーション対応の先進モデル確立に向けた協創を開始。2017年5月、オークマの新工場「Dream Site2」(以下、DS2)において、「工場制御周期の高速化」と「生産の見える化の進化」における共同実証をスタートしました。

    *1
    Artificial Intelligence
    *2
    マスプロダクション(大量生産)とカスタマイゼーション(特注生産)の合成語

    マスカスタマイゼーションに対応した次世代ファクトリーの構築

    オークマは次世代ファクトリーの構築に向け、2013年に24時間週7日体制の生産工場Dream Site1(以下、DS1)の稼働を開始。複合加工機、中・大型旋盤、立形旋盤などを製造するDS1は、生産設備の自動化・無人化と稼働状況の見える化により稼働率を上げ、生産性向上を達成しました。さらに、マスカスタマイゼーションの実現に向け、DS1の自動化・無人化を高度化し、見える化を進化させたDS2を構築。DS2では多様な中・小型旋盤、研削盤を生産するため、約4,000品目もの超多品種少量の部品加工を行う必要がありました。そこでは「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ」作り、急な短納期品の割り込み受注や、納期・仕様の変更による生産計画の変更にも柔軟に対応できる究極の高効率生産モデルの構築が求められていたのです。

    専務取締役 FAシステム本部本部長兼 技術本部管掌の家城 淳氏は「DS2はDS1に比べ品目が増加し、ワークの移動、治具の段取り、加工工程などが複雑になるため、従来の生産管理だけでは生産の進捗を迅速に把握できず、課題への対応も遅れてしまいがちでした。DS1より見える化を進化させ、急な変更指示が入っても生産状況を即座に把握し、作業指示の周期を速める仕組みを一緒に実現してくれる外部の力が必要となりました。同じ製造業として、モノづくり現場を熟知し、経営管理システムやサプライチェーンを含めた工場全体の最適化ソリューションをトータルにカバーできる日立さんが最良のパートナーだと判断しました」と明かします。

    「工場制御周期の高速化」と「生産の見える化の進化」の実現に向け協創

    オークマと日立はDS2の構想設計に着手し、旧工場比で生産性2倍・生産リードタイム半減をめざす共同実証を2017年5月に開始。「工場制御周期の高速化」において、これまで生産の作業指示は日単位だったが、IoTを駆使して時間単位の正確性で迅速に作業を指示できるようになりました。また、素材や部品、その保管場所や搬送台車に識別用のワークID(素材につけるRFIDタグ)を取り付けることで、ワークの工場内の加工部品の保管場所とその状態を正確に把握できる工程管理システムを導入。「生産の見える化の進化」については、「進捗・稼働状況監視システム」でIoTを活用し、生産の進捗状況と設備の稼働状況の両データを収集・連携させて一元的に見える化し、さらにデータの高度な分析を可能としました。

    工場内のシステム運用を担当する大口製造部 DS部品課 課長の川廣 紀幸氏は「進捗・稼働状況監視システムにより、現場データを統合的かつリアルタイムに分析し、工場内でトラブルが起こった際には手元のタブレット端末や製造現場の画面に状況を表示し、問題の早期発見と対処が行えます。マシン停止の原因究明、対策優先度の高いマシンの特定、遅れが発生している場合には生産計画と実績のかい離、将来の影響度などもシミュレーションし、挽回計画の立案が可能です。このため、データに基づいた改善策を早期に立案できるようになりました」とシステム導入の効果について語ります。進捗・稼働状況監視システムには、日立の大みか事業所で培ったノウハウに基づいた「Lumada」の生産計画最適化ソリューションを活用しています。

    また、川廣氏は今回の実証について「従来は作業指示が日単位だったため、工場内の滞留時間も長かったのですが、IoTを活用した工程管理システムや進捗・稼働状況監視システムとの連携で、リードタイムを削減できました」と説明します。

    次世代ファクトリーのさらなる進化を追求

    DS2における高効率生産実証モデルの導入効果について家城氏は、「実証を開始してまだ5カ月ですが、当初目標としていた数値に着実に近づきつつあります。日立さんのシステムで生産設備の稼働率からスループットに必要な部品の流れまで、生産のすべてを見える化できるようになったことが効いています。Lumadaの生産計画最適化ソリューションは、データ分析で問題を迅速に把握し、全体最適の改善を促す用途に合致し、モノづくりのノウハウがさまざまな製造現場で共通して生かせることを示してくれました」と笑顔を見せてくれました。

    オークマと日立は今後もDS2をマスカスタマイゼーション対応の高効率生産モデルの実証工場として、生産プロセス全体の自動化と最適化を進め、次世代ファクトリーのさらなる進化を追求していきます。今後は、進捗・稼働状況監視システムで収集・蓄積した現場のビッグデータとAIのシミュレーション技術なども活用し、現場状況に応じたより精度の高い生産スケジュールを自動生成するシステムを開発していく予定だといいます。

    “知”のサービス化で国内外の製造業に貢献

    「DS2の進化はまだまだ続きます。マスカスタマイゼーションの潮流では、改善のPDCAサイクルを回しながら、日々高さを増す市場ニーズのハードルを越えていくことが重要です。今回の実証を通じて、オークマが得意とする機械制御による生産性向上、日立さんが得意とする工場やサプライチェーン全体の最適化、この2軸の交点には、いくつもの改善サイクルが発見でき、そこで創出したナレッジ=“知”は他の製造業の課題解決にも必ず役立つと確信しました。今後は国内外の製造業のお客さまに、これらの“知”をモノづくりサービスとして提供し、生産性向上、次世代ファクトリーの構築を支援していくことが日立さんとの新たな協創テーマになっていくでしょう」と家城氏は今後の展望を語ってくれました。IoT活用による多品種少量生産で、世界最高のモノづくりを追求するオークマの挑戦を、これからも日立は力強く支援していく構えです。

    家城 淳 氏
    オークマ株式会社
    専務取締役 FAシステム本部本部長
    兼 技術本部管掌

    川廣 紀幸 氏
    オークマ株式会社
    大口製造部 DS部品課 課長

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