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  • 協創事例
  • 日立と福岡市の協創により、ビッグデータ分析で
    地域包括ケア情報プラットフォームを構築

    2017-09-22

    九州の主要都市である福岡市は、人口約156万人のうち65歳以上の高齢化率が「超高齢社会」の分岐点となる21%に達し、2040年には高齢者が人口の約1/3となる49万7000人にまで増えると推定されます。そこで地域包括ケアシステムの実現に向けた科学的エビデンスに基づく施策立案のため、日立をパートナーに整備したのがICTを活用した情報通信基盤「福岡市地域包括ケア情報プラットフォーム」です。ここではその狙いについて紹介します。


    提供:福岡市

    九州の主要都市である福岡市は、約156万人の人口のうち65歳以上の高齢化率が「超高齢社会」の分岐点となる21%に達し、2040年には高齢者が人口の約1/3となる49万7000人にまで増えると推定されています。この急速な高齢化がもたらす地域課題について、福岡市保健福祉局 政策推進部 政策推進課 課長の木本 昌宏氏は次のように説明します。

    「今後、慢性的な疾患の療養が施設から在宅での介護へと移行するなか、家族や医療・介護関係者など支える側の負担が増加していきます。高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らしていくためには、医療や介護などの限られた社会資源を効果的かつ効率的に提供するための仕組みづくりが必要になります。そこで福岡市では、市の実状や特性を踏まえた『地域包括ケアシステム』の構築について2012年度から検討を進めてきました」

    福岡市は、医療機関や介護事業所、社会福祉協議会などの関係者と検討を重ねるなかで、ビッグデータ分析をはじめとするデジタル技術を活用した情報通信基盤「福岡市地域包括ケア情報プラットフォーム」を整備し、より効果的な地域包括ケアシステムの実現を推進していくことに決定しました。福岡市保健福祉局 政策推進部 政策推進課 ICT活用推進係長の中田 和広氏は、福岡市のケアシステム実現に向けたポイントは大きく3点あったと振り返ります。

    「1点目が医療や介護、予防健診に係わる施策を科学的エビデンスに基づいて最適に企画・立案すること。2点目が医療や介護関係者の負担軽減とケアサービスの質向上を図るため、家族と医療・介護関係者が相互に連携できる環境を整備すること。3点目が生活する上で必要となる医療機関や介護施設の状況、配食や家事援助などの民間サービスの情報を集約・提供することでした」

    さまざまな医療・介護・予防(健診)情報を住民にひもづけて管理

    地域包括ケア情報プラットフォームを受注した日立は、2015年度から基盤構築をスタート。これまで庁内外で断片的に管理されていた医療・介護関連のビッグデータを集約する「データ集約システム」、そのデータを分析して医療・介護に関する地域ニーズや課題を見える化する「データ分析システム」、要介護者の情報を家族や医療・介護関係者などで共有できる「在宅連携支援システム」、福岡市内の医療・介護・生活支援に関する最新情報をWebサイト上で提供する「情報提供システム」を構築しました。その中でも全体の要となるのが、230種・約22億件のデータをセキュアな環境で集約・整理するデータ集約システムです。

    「データ集約システムには市が保有する医療・介護・健康関連のさまざまなデータが集約されています。すべて住民個人にひもづいた形で管理されるため、各人の医療・介護の変遷をたどることができ、一貫性のあるデータとして高い信頼性を持っているのが特長です。また、地域包括ケア情報プラットフォームはセキュリティ面に十分配慮しており、データ分析システムにおいては個人情報の匿名化に加え、個人を特定する絞込みを防止する機能も備えています」と中田氏は語ります。

    エビデンスを根拠とした地域医療や介護事業の立案

    データ分析システムはチャート図や地図情報を用いた現状や課題の見える化に加え、AI(人工知能)によって個人のライフログ(出生から死亡までの各種記録)に基づいた医療費・介護費の現状分析や将来推計、疾病別の介護認定状況などの相関分析が容易に行える点が特長です。このシステムを中長期的な医療・介護計画の企画・立案・検証・改善に生かしていきたいという福岡市の思いをサポートするため、日立は約27万人の組合員(被保険者)で構成された日立健康保険組合のビッグデータ分析で実証済みの医療費予測モデルなどの知見を適用。地域医療や介護事業のデータドリブンな意思決定の推進を支援しています。

    「日立さんは医療や介護、レセプトなど、フォーマットの異なる多様なヘルスケアデータの集約とビッグデータ分析で、非常に高い知見とノウハウを持っています。そのため医療・介護に関するデータ分析の結果を効果的な施策の立案にどう生かしていけばよいのか、われわれの考えが及ばない部分まで深く掘り起こし、多角的なデータ活用や分析の切り口などを提案してくれました。これから日々蓄積されていくビッグデータを活用すれば、過去データから立案した施策の成果が短・中・長期的なスパンで確認できるようになるため、施策の見直しを積極的に行うことで効率的なPDCAサイクルが展開できると考えています」(中田氏)


    ※「データ分析システム」による分析イメージ

    プラットフォームを先進のまちづくりにも生かす

    福岡市は、このプラットフォームを活用した医療・介護などの行政施策推進と、ステークホルダーが連携した医療・介護サービスの質向上により、後期高齢者の医療費増加の抑制や、年間4億円の医療費負担の軽減、在宅介護の充実による高齢者の就業率増加などに取り組む予定です。同時に、ビッグデータの分析環境をヘルスケア以外の分野でも積極的に活用することで、地域の幸福の最大化をめざす取り組みにも意欲をみせます。

    「今後は時代の流れの中で、行政だけでは解決できない課題がたくさん出てくると思います。そこで産学官が連携した課題解決に向け、データ分析システムで得られた知見や地域特性などを、将来的にオープンデータとして公開し、市民向けの新たなサービス創出や企業誘致、子育て、防災などへの活用も検討していきたいと考えています」(木本氏)

    超高齢社会を見据えた地域包括ケアシステムの実現に加え、ビッグデータやAI、オープンデータといったテクノロジーを活用した先進のまちづくりにも挑戦する福岡市。その取り組みを、これからも日立は幅広い技術とノウハウで支援していく考えです。

    木本 昌宏 氏
    福岡市保健福祉局
    政策推進部 政策推進課
    課長

    中田 和広 氏
    福岡市保健福祉局
    政策推進部 政策推進課
    ICT活用推進係長

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