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世界90カ国・地域以上で自動車事業を展開し、「スバリスト」と呼ばれる熱烈なファン層を抱えることで知られる富士重工業株式会社(以下、富士重工業)。同社はブランド価値向上施策の一環として、タブレット端末を活用した特約店(ディーラー)向け新商談支援システム「SUBARU Sales Support システム」を構築した。その開発にあたり、商談シーンでスバルならではの「安心と愉しさ」を提供するには何が必要かという構想策定に使われたのが日立製作所(以下、日立)の価値協創活動「Exアプローチ」である。完成したシステムには「SUBARUブランドとの最初のタッチポイントとなる商談シーンから、ワクワクドキドキしてもらいたい」という富士重工業の想いが込められている。

商談シーンでも「安心と愉しさ」を提供したい

富士重工業は、レガシィやインプレッサに代表される個性的なスバルブランドのクルマの提供で国内外に多くのファンを持つ自動車メーカーだ。産業機器や航空宇宙も手がける卓越した技術力が生み出した「水平対向エンジン」、自動ブレーキやクルーズコントロールなどを装備した運転支援システム「アイサイト」、「シンメトリカルAWD」など数々の独自技術で、「安心と愉しさ」を提供することが同社のモットーとなっている。

「当社は現在、中期経営ビジョン『際立とう2020』の中で“スバルブランドを磨く”というテーマに注力しています。それはお客さまに“安心と愉しさ”という価値を提供するため、商品・技術の強化に加え、販売やアフターサービスに至る、すべてのお客さまとの接点における質の向上をめざす取り組みです。その一環として着手したのが、全国のスバル特約店(ディーラー)で、より深いブランド価値の提供とコミュニケーションの深化を実現する新商談支援システムの構築でした」と同社の販売促進部 促進課 主事の西久保 真一郎氏は語る。

これまで商談はカタログなどの紙媒体を中心に使い、車種やカラー、オプションなどを選ぶ形が一般的だった。展示車両やカラーバリエーションも限られているため、顧客が見たいクルマのイメージやスバルブランドの魅力が十分伝え切れていないのではという課題感があったという。

「これだけ技術革新が進んでいるのに、商談の場ではお客さまに新しい提案や訴求ができていない。見積書や注文書の作成も、ほとんど紙ベースで他社と差別化できる要素がありませんでした。インターネットや口コミでさまざまな情報を入手できるようになったことで、お客さまがリアルな店舗に足を運ぶ回数は減っています。商談は、せっかく来ていただいたお客さまとの貴重なタッチポイントの場ですので、クルマ選びをする最初のタイミングから、ワクワクドキドキしていただきたい。そのためには、今までにない商談シーンを演出する新しい仕掛けが必要でした」と営業支援部 ITグループ主査の田中 聖志氏は従来からの課題を振り返る。

ブランド価値を向上させる機能を
Exアプローチで現場から抽出

新しい商談シーンを演出するシステムという漠然としたイメージは浮かんだものの、富士重工業にとっても初の試み。具体的なシステムに落とし込むことは簡単ではなかったという。

「お客さまも一緒にご覧になる画面をどう作り、どのような機能を実装すればいいのか、業務上の要件を抽出していくことは簡単ではありませんでした。そこで日立に相談したところ、お客さまや現場の想いを理解しながら、具体的なシステム構想につなげていけるExアプローチという取り組みがあることを提案してくれたのです」と田中氏は振り返る。ExアプローチとはITシステム構築の超上流工程(構想策定・システム化計画・要件定義)において、顧客業務を深く理解し、課題や問題を一緒に解決しながら新しい経験価値(Experience)を創り出していく日立独自の価値協創活動だ。

富士重工業と日立は新商談支援システムに求められる要件を探るため、2014年10月からExアプローチを活用したシステム化構想プロジェクトをスタート。セールススタッフへのインタビューや、日立のスタッフによる商談シーンの現場調査などで現状把握とニーズ整理を行った後、タブレット端末の活用を想定したロールプレイ(画面イメージを投影し、セールススタッフとお客さまのやりとりを模擬演技する)を取り入れたワークショップなどを実施した。「現状把握の過程でセールススタッフが見積書や注文書の入力・作成のため、商談時間の2割~4割、離席している実態が明らかになりました。これはメーカー側でも薄々感じていたものの、正確には把握していなかった課題でした。そこで新システムでは、スバルブランドの魅力を訴求する商談の“質”と、お客さまの待ち時間を極力減らすという商談の“量”の双方を改善する方向性を見いだしました」と西久保氏は語る。

実際の要件定義やシステムの開発・構築フェーズにも携わった田中氏もExアプローチを高く評価する。「お客さまと一緒にタブレット端末の画面を見ながらスバルの魅力や特長を伝えつつ、実業務の見積もり・注文まで行っていく新システムを導入すると、セールススタッフは従来の仕事の進め方や発想を大きく転換しなければなりません。その開発を机上の要件定義だけで進めるのは非常にリスクが大きい。しかしExアプローチでは画面遷移やお客さまとの会話をロールプレイでリアルに可視化しながら、プロジェクトメンバーでよりよいアイデアを出し合うことができます。これは手戻りのない開発に非常に有効でした」。

このように日立はExアプローチで抽出された現場のさまざまな想いを要件定義としてまとめ、システム開発フェーズでは確かなSI力で具体的な機能として実装するなど、トータルに支援を行った。

見積もり、注文書の提示までワンストップ対応。
質・量の両面で魅せる商談の実現へ

その結果、好きなカラーやオプションでカスタマイズした車両をリアルな3D画像で表示しながら見積もり・注文まで行うシステム、分割払いに必要なクレジット見積システムなどとシームレスに連携させた「SUBARU Sales Supportシステム」が完成した。同システムは、2016年5月から3,000台以上のタブレット端末を使い、全国のディーラー460店舗で利用が開始されている。

もちろん、その最大の成果は、商談シーンでお客さまに新しい体験を提供できることだ。

画像: SUBARU Sales Supportシステムよる商談シーン 提案や、見積もり・注文書の提示までタブレット端末でワンストップに実現。長時間お待たせすることなくさまざまな要望にスムーズに応える質の高い提案が実現した

SUBARU Sales Supportシステムよる商談シーン
提案や、見積もり・注文書の提示までタブレット端末でワンストップに実現。長時間お待たせすることなくさまざまな要望にスムーズに応える質の高い提案が実現した

「お客さまが最初にスバルに接するのが商談の場です。そこで欲しいクルマやオプションのイメージを画面で見ながら選べる愉しさ、見積もりが瞬時に出てくる快適さなどに“スバルって他とは違うね”と感じていただけるシステムになったと思います。店舗内はもちろん、お客さまの自宅やショッピングモールなどで開催する出張展示会でも使えるため、提案の機会と幅が一気に増えたのも大きなメリットです」と西久保氏は話す。 

これに加え、特約店側のメリットも見逃せない。

「見積もりやクレジットの提案まで極力離席することなくタブレット端末上からお客さまの前で行えるようになったため、商談がスムーズになったとセールススタッフからの評価は上々です。画面が商談の流れに沿って自然に遷移していくため、業務効率の向上に加え、スタッフのスキルに左右されない商談の質の平準化にもつながると期待しています」と田中氏は喜ぶ。

例えば、新車販売時のクレジット分割払いの支払いイメージの提示についても、商談フローに組み入れられており、次の画面ですぐに見積もりのカスタマイズができるという。

新しく稼働したSUBARU Sales Supportシステムは自動車業界でも先進的なデジタルシフトへの取り組みとして注目を集めている。今後も富士重工業は日立とともに、「安心と愉しさ」を提供するスバルブランドの価値向上をめざしていく考えだ。

User Profile
富士重工業株式会社
代表者:代表取締役社長 吉永 泰之
設 立:1953年(昭和28年)7月15日
資本金:153,795百万円
URL:http://www.fhi.co.jp/
事業概要:自動車、航空宇宙、産業機器という3つの分野で事業を展開。それぞれの分野で独自の技術を追究しながら融合させることで、新しい複合技術を生み出している。

画像: 西久保 真一郎 氏 富士重工業株式会社 スバル国内営業本部 販売促進部 促進課 主事

西久保 真一郎 氏
富士重工業株式会社
スバル国内営業本部
販売促進部 促進課
主事

画像: 田中 聖志 氏 富士重工業株式会社 スバル国内営業本部 営業支援部 ITグループ 主査

田中 聖志 氏
富士重工業株式会社
スバル国内営業本部
営業支援部 ITグループ
主査

関連リンク

富士重工業 SUBARU Sales Supportシステム「もっとわくわくしてもらえる商談へ」- 日立(YouTubeサイト)>
「Exアプローチ」に関するWebサイト >

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