企業活動におけるITの重要性が高まる中、どのようにITを活用していくのかは、企業の競争力を左右する重要な経営課題となりつつある。しかし、どんな展開が自社の競争優位を実現し、企業価値の向上に結び付くのか。ここでは、企業のIT戦略に詳しい早稲田大学ビジネススクール ディレクター・教授、同大学IT戦略研究所所長の根来龍之氏に話を伺い、企業の経営革新、それをけん引するIT戦略にまつわるトレンドや問題点などについて考察する。

画像: 根来 龍之(ねごろ たつゆき)氏 早稲田大学 ビジネススクール ディレクター 早稲田大学 IT戦略研究所 所長 ビジネススクール 教授 1977年京都大学文学部卒業(哲学科社会学専攻)。1983年慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員などを経て、2001年から早稲田大学教授。経営情報学会会長、国際CIO学会副会長、経済産業省CIOフォーラム委員、日本オンラインショッピング大賞実行委員長、CRM協議会副理事長、会計検査院契約監視委員会委員長などを歴任。主な著書に『事業創造のロジック』(日経BP社)、『代替品の戦略:攻撃と防衛の定石』(東洋経済新報社)、『プラットフォームビジネス最前線』(翔泳社)など。

根来 龍之(ねごろ たつゆき)氏
早稲田大学 ビジネススクール ディレクター
早稲田大学 IT戦略研究所 所長
ビジネススクール 教授
1977年京都大学文学部卒業(哲学科社会学専攻)。1983年慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員などを経て、2001年から早稲田大学教授。経営情報学会会長、国際CIO学会副会長、経済産業省CIOフォーラム委員、日本オンラインショッピング大賞実行委員長、CRM協議会副理事長、会計検査院契約監視委員会委員長などを歴任。主な著書に『事業創造のロジック』(日経BP社)、『代替品の戦略:攻撃と防衛の定石』(東洋経済新報社)、『プラットフォームビジネス最前線』(翔泳社)など。


業種ごとに異なるIT戦略の意味

画像: 業種ごとに異なるIT戦略の意味

「ITの重要性は業種によって違います。IT戦略を考える前に、まず冷静な目でそれを見極めることが大事です」と根来氏は指摘する。金融、小売、ゲームといった業界では、ITはビジネスそのもの。ITによって商品を作り、IT自体が他社との差別化につながる。ITは売り上げの拡大をもたらすものであり、積極的なIT投資が欠かせない。

一方、ITのビジネスへの直接的な影響がそれほど大きくない業界では、ITはビジネスのインフラとしての投資という側面が強い。インフラとしての長期的な視野からITを捉え、費用対効果が重視される。このように業種によってITの持つ戦略上の意味は違ってくる。IT戦略立案の基本的なアプローチとして、この違いを理解しておきたい。

しかし、一方で全業種に共通したテーマも存在する。根来氏は全業種に共通したITの戦略上のテーマを二つ挙げる。一つはITの更新およびコスト管理であり、もう一つはコミュニケーション基盤としてのITである。ここではまず共通したテーマに取り組むうえで、どんなポイントがあるのか考えてみよう。

現在のITコストの構造に注目する

まず問題として注目すべきなのが、ITコストの構造である。「IT投資のほとんどが更新投資で占められています。ここをまずどうするのかを考えるべきでしょう」と根来氏。直近に迫った消費税増税でもシステムの修正が必要になるように、外部環境の変化によって更新を余儀なくされるケースや、ハードウェアの寿命やソフトウェアのサービス期限、海外展開のためのシステムの見直し、合併など体制の変化によるシステムの統合など、様々な社内外の要因によってITの更新投資が必要になる。

画像: 現在のITコストの構造に注目する

こうした更新投資がIT投資の中で大きな割合を占めていることで、攻めの新規投資に回す予算がなく、他社に後れを取る原因になることもある。ITコストの構造をどうやって変えることができるのかは経営上の大きな課題である。根来氏は「アウトソーシングやクラウドの活用がコスト上大きな意味を持つ」と説く。「基幹システムにしても、データベースにしても、保有するだけで、ライセンス料や保守料が発生しています。この部分を外部に委託してしまえば、コスト構造は大きく変わります」(根来氏)。

ここで重要となるのが、どの部分を外部に委託するのかという点だ。基準となるのが、他社との差別化要因になっているかどうかだろう。クラウドサービスなどは他社と同じシステムを利用するものだけに、システムによる差別化は難しくなる。この場合、システム以外の要因による差別化が必要になる。ただし、根来氏は「専用のシステムでなくても、ソフト的な使い方で十分差別化が図れるケースもあります」と視野を広げて検討することを勧める。クラウドサービスを利用する場合でも、データの持ち方や活用の仕方による差別化は検討できる。

信頼性という面での心配はないのだろうか。根来氏は「クラウド化によって問題が起きたことはありません」と安全であることを強調する。ただし、データセンターの設置場所については一考が必要だろう。海外にある場合には、社会的なアクシデントによってデータを検閲されたり、システムが利用できなくなったりするケースも考えられるからだ。

コミュニケーション基盤の進化を知っておく

もう一つの共通のテーマは、コミュニケーション基盤としてITをどう捉えるかだ。「現在コミュニケーション基盤のメインになっているメールシステムは、10年後には廃れている可能性が高いということを認識しておくべきです」と根来氏。日々の業務を支え、企業活動の基盤ともいえるコミュニケーション基盤だけに、将来の変化を見通した戦略の立案が求められる。

大きな影響を与えているのがFacebookやTwitterといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の広がりである。「1対1のコミュニケーションを想定したメールシステムより、グループでの情報共有のためのSNSの方が企業活動には合っています。過去のやり取りの記録が見やすいとったメリットもあります。将来は社内SNSといった企業向けSNSに移行していくでしょう」(根来氏)。

ここでのもう一つのポイントは、コンシューマー向けのサービスが企業活動で利用されるようになりつつあるということだ。根来氏は「Googleやマイクロソフトも、もともと個人向けサービスから始まり、今は企業システムとして利用されています。スマートフォンの普及もこの流れに拍車をかけています。コンシューマーサービスの企業システムへの取り入れという流れがあるのです」と指摘する。

SNSのサービスがクラウドサービスとして提供されていることも意味は大きい。簡単に利用を開始でき、社外ともつながり、保守・運用は外部に任せることができる。企業のITコスト構造の変革にとっても大きなメリットがあるだけに、プライベートでSNSに慣れ親しんだ人が増えれば、企業内での活用も急速に進むことになる。それをどう取り込んでいくのか。IT戦略を考えるうえで、見逃せないテーマだろう。


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