当コラムシリーズは全3回で構成されている。初回では、IoTが企業にどのようなインパクトをもたらすのか、なぜ企業が早急にIoTに取り組まなければならないのかについて説明した。第2回コラムでは、IDCが実施した企業のIoT利用動向調査の結果に基づき、IoTがさまざまな産業分野に広がってきている背景について考察を行った。最終回では、国内IoT市場が3つの方向性で成長する中、企業が本格的にIoTを活用していく上で準備すべきポイントについて明らかにしていく。

IDCでは、<図1>に示した通り、国内IoT市場は「1.産業分野の拡大」「2.用途/目的の拡大」「3.機器/地域の拡大」という大きく3つの方向性で継続的に成長するととらえている。以下ではまず、この3つの成長の方向性について解説する。

画像: IoTが引き起こすパラダイムシフト ―あらゆる産業はビジネスの変革を迫られる― (鳥巣 悠太 氏)
第3回:国内IoT市場は継続的に成長。IoTの本格活用に向け、企業が準備すべきポイントとは?

アナリストプロフィール

画像: 鳥巣 悠太(とりす ゆうた) IDC Japan 株式会社 コミュニケーションズ マーケットアナリスト

鳥巣 悠太(とりす ゆうた)
IDC Japan 株式会社 コミュニケーションズ マーケットアナリスト

IoT(Internet of Things)を専門分野とし、5年以上にわたり調査/アドバイザリー業務に従事。また、同分野に関する数多くの講演やメディア向けプレゼンテーションなど、豊富な経験を有する。IDC Japanにおける現職では、IoT に関わるビジネス動向や技術トレンドの市場分析をベンダー側とユーザー側の双方の角度から実施し、幅広い顧客を対象として調査/アドバイザリーサービスを提供。2015年現在、IDC年間情報提供サービス「Japan Internet of Things Ecosystem and Trends」を担当している。

専門の分野/テーマ

IoT市場のエコシステム/トレンド分析
アナリティクス/セキュリティ/ウェアラブル/その他専門サービスのうちIoTビジネスに関わる分野
モバイルサービス/デジタルコンバージェンス分野、他


成長の方向性① 産業分野の拡大

1番目の方向性は、IoTを導入する「産業分野の拡大」である。IoTの産業分野が拡大する背景には、事業者の「ソリューションの最適化」および「営業戦略の最適化」などが大きく関係している。

まずソリューションの最適化について、昨今では大手のITベンダーを中心に、クラウドプラットフォームを通じて、より安価なIoTのトライアルサービスやIoTアプリケーションの開発環境などを、競って提供する傾向が見られる。こうしたプラットフォームはIoT導入における技術的なハードルを大きく下げることが可能と考えられるため、IoTを利用する産業分野の拡大に寄与すると考えられる。また営業戦略の最適化について、IDCが2015年8月に実施した調査では、IoTソリューションを導入、運用する際の企業の窓口のうち、約3割を事業部門が占めることが明らかになっている。そのため多くの事業者では企業の事業部門をターゲットとし、適切な営業/販売アプローチを行うことを目的として、各産業分野に強みを持つパートナーとの提携を推進している。

こうしたことから、事業者のIoTソリューションの最適化および営業戦略の最適化といった側面において、IoTを利用する産業分野は今後も拡大を継続すると見込まれる。

成長の方向性② 用途 / 目的の拡大

2番目の方向性は、IoTを利用する上での「用途/目的の拡大」である。この方向性に向かう背景としては、事業者の「分析対象データの広範化」や、IoTをとりまく「社会環境の変化」などが大きく関係すると考えられる。

まず分析対象データの広範化について、最近では企業が収集したIoTデータを特定の事業者が占有するのではなく、複数の事業者間でシェアするようなケースが登場してきている。それにより事業者が取り扱うデータが広範化し、分析可能なデータの量や種類が飛躍的に増大することで、企業がIoTを利用する上での用途/目的の拡大につながるとIDCではみている。また社会環境の変化について、国内における少子高齢化や社会インフラの老朽化が進む中、そうした社会問題を効率的に解決する上で、高齢者の見守りサービスや、インフラの点検業務などにIoTを活用する動きが加速しつつある。

こうしたことから、事業者の分析対象データの広範化および社会環境の変化といった側面において、IoTの用途/目的は多様化が進むことが見込まれる。将来的には、人工知能を活用したロボティクスや自動車の自動運転など、これまでにない用途/目的にもIoTが広がることが期待される。

成長の方向性③ 機器 / 地域の拡大


3番目の方向性は、IoTで利用可能な「機器/地域の拡大」である。この方向性に向かう背景としては、「機器接続技術の標準化推進」や「マルチキャリアIoTの浸透」などが大きく関係すると考えられる。

まず機器接続技術の標準化推進について、たとえば工場の中の製造機器群を今後IoT化させていくためには、異なるメーカー製の機器同士であっても、互換性を持った接続が必須となる。そうした中、大手の半導体メーカーや、民生機器/産業機器メーカーが主導することで、機器間の相互接続性を高めようとする取り組みが加速しており、IoT機器の広がりに貢献すると見込まれる。またマルチキャリアIoTの浸透について、大手の通信事業者が中心となり、IoT機器が輸出先に応じて、その地域の事業者ネットワークに自動的に接続する仕組みを検討しており、近い将来商用化される見込みである。こうした取り組みにより、特に世界各国へIoT機器を輸出するような企業は、グローバルなIoT利用を容易に実現できる環境が整い始めていると言える。

こうしたことから、機器接続技術の標準化推進およびマルチキャリアIoTの浸透という側面において、IoTで利用可能な機器/地域はさらに拡大することが見込まれる。なお、そうしたあらゆるモノがあらゆる地域でつながるような時代においては、現在とは比較にならないほどの強固な情報セキュリティ基盤も併せて必要になると考えられる。

企業がIoTを活用して競争を勝ち抜くために、準備すべきこと

このように、国内のIoT市場は、産業分野の拡大、用途/目的の拡大、機器/地域の拡大という3つの方向性で成長しつつあることが明らかになった。ではこれから先、企業がIoTを活用して熾烈な競争を勝ち抜いていく上でどのような準備が必要になるだろうか。当コラムシリーズの締めくくりとして、以下にそのポイントを記載する。

まず1点目に、企業は競合他社に先駆け、IoTを積極的に活用するような姿勢が重要になると考えられる。IoTビジネスにおいてはまだ具体的な成功モデルなどがあまり明らかになっておらず、したがって企業がそうした成功モデルを実現するためには、競合他社よりも多くの試行錯誤を率先して重ねるような主体性が鍵になるとIDCではみている。既述の通り最近では、安価なIoTのトライアルサービスやIoTアプリケーションの開発環境などをクラウド経由で利用することが可能になってきている。そうしたツールを積極的に活用し、現場の担当者や情報システム部門、経営層がその有効性をいち早く認識することが、成功への近道になると考えられる。

また2点目として、IoTを有効に活用する上では、事業者との幅広いエコシステムが必要になると考えられる。なぜならIoTを実現する上では、組み込みシステムやセンサー、通信サービス、クラウド、分析ソフトウェア、システムインテグレーション、セキュリティといった多種多様なリソースを適切に組み合わせる必要があるためである。

加えて3点目として、上記のIoTを活用した新たな成功モデルにつながるアイディアを創造する上でも、事業者のエコシステムとの密な連携が肝要になると考えられる。

こうしたポイントを念頭に置いた上で、あらゆる企業はIoTが引き起こすパラダイムシフトに対し、早急に準備を整えていくことが必要になるとIDCではみている。

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