画像: 朝倉 陽保氏 株式会社 産業革新機構専務取締役(COO)

朝倉 陽保氏 
株式会社 産業革新機構専務取締役(COO)

三菱商事株式会社にて技術、情報通信、ヘルスケア等分野の事業開発及び、事業投資に従事。その後、エイパックス・グロービス・パートナーズを経て、カーライル・グループのマネージングディレクターに就任。バイアウト部門投資責任者およびグロースキャピタル部門日本代表を歴任。2009年7月 株式会社産業革新機構専務取締役COO就任。慶應義塾大学工学部卒業。米国ハーバード大学MBA。


成熟した資本主義経済では、リスクを取ることが成長につながる

現在、社会イノベーションが注目されている背景には、先進国の経済成長の低迷があります。ここで重要な考え方として申し上げたいのは、社会の発展に伴う一般的な経済成長を終え、成熟社会へと突入した先進国がさらなる経済成長を果たそうとするなら、リスクを取らざるを得ないということです。なぜなら、リスクとリターンは、表裏一体であり、トレードオフの関係にあるからで、逆に言えば、リスクはチャンスにつながると言うことです。つまり、地政学的問題や貧困、情報格差、教育格差といった社会の歪みの解消に取り組むことが、opportunity(機会)となる。そして、ここにこそ社会イノベーションの源泉があるのです。

画像: 成熟した資本主義経済では、リスクを取ることが成長につながる

リスクとは、「ある事象の変動に関する不確実性」のことを言いますが、世の中には、自然災害リスクや経営リスク、政治リスクなど、さまざまな種類のリスクが存在し、それぞれが社会課題の一因となっています。たとえば、日本ではかつて、公害という大きなリスクを伴う社会課題がありました。当初、公害問題は単にコストでしかありませんでしたが、それを乗り越える中で、日本のインフラ技術は飛躍的に進歩し、ノウハウを蓄え、排ガス対応技術やエネルギー効率の向上といった世界最高の環境技術を生み出してきた。公害という社会課題が、結果として日本の経済発展の原動力になったわけです。つまり、「社会の正義」と「市場の評価」というのは、長い目で見れば一致するものだということでしょう。これが資本主義経済の本質でもあります。

社会イノベーションの実現には、長期的な投資のための施策が不可欠

しかしながら、公害のような社会課題がopportunityとなるまでには、30∼50年という長い歳月を要します。当然、一企業がそれだけの長い時間軸を見据えながら、事業価値が生まれるまで待つことはできません。そこで必要とされるのが、国が定める規制であり、情報格差の解消であり、企業への動機付けであり、教育であり、資本市場の在り方の変革だと思います。ともすれば短期的利益を追い求めて暴走する市場を、さまざまな施策によっていかにしてコントロールできるかが、これからの社会の発展を促すカギと言えます。

現在、私がCOOを務める産業革新機構は、2009年7月に官民共同で設立した投資ファンドです。長期的な視点に立ち、国の成長戦略に則って、民間の資本が敬遠するようなリスクの高い案件に対して投資を行うことにより、国富に適う社会イノベーションを実現しようとしています。ただし、個別の投資判断については、収益性と実現可能性に加え、投資インパクトの視点から、民間出身者が民の目線で行っているのが特徴的です。投資インパクトとは、まさにどれだけ社会に対して革新的で価値があるかということ。投資を通じて、日本の革新的で価値ある技術やアイディアに光を当てることにより、社会の発展に貢献できればと考えています。



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