高齢化の進展、生活習慣病の増加、医療費の増大など、深刻化するヘルスケア分野の課題を解決するために、私たちにはどんなことができるのでしょうか。予防をキーワードにヘルスケアの現状を探り、将来を展望しました。

画像: 株式会社ミナケア 代表取締役・医師 山本 雄士氏

株式会社ミナケア
代表取締役・医師
山本 雄士氏

画像: 日経BP社 日経デジタルヘルス 編集長 小谷 卓也氏

日経BP社 日経デジタルヘルス
編集長
小谷 卓也氏

画像: 株式会社日立製作所 執行役専務 ヘルスケアグループ長 兼 ヘルスケア社社長 北野 昌宏

株式会社日立製作所
執行役専務 ヘルスケアグループ長 兼 ヘルスケア社社長
北野 昌宏


予防が生み出す価値 (1)今、求められているヘルスケアのイノベーション

小谷
日経デジタルヘルスでは、「ソーシャルホスピタル」という概念を提唱しています。この言葉は、医療は病院だけが担うというこれまでの世界観から、社会全体が医療の参加者、構成員になっていくというこれからの世界観を表現したものです。今日、超高齢化、医療費の高騰、生活習慣病の増加といった社会課題を背景に、新しい医療の仕組み、医療の変革が求められています。そして、その課題解決の一つになるのがソーシャルホスピタルあるいは医療のコンシューマ化であり、これを支えるのが本日のテーマであるヘルスケアのイノベーションであると考えています。

山本さんから自己紹介を兼ねて、現在のヘルケアへの関わりについてお話いただけますか。

山本
私はもともと循環器内科の医者で、心筋梗塞や不整脈などの治療に約6年従事していました。その中で、自分のやっている医療が今の時代に本当に必要とされているサービスなのか、医療自体の役割を見直す必要があるのではないかという疑問を持つようになり、ハーバードビジネススクールに2年間留学しました。そこで、これまで重きをおかれていた医療はコストとしての医療、トラブルシューティング型の医療ではないかと思い始め、これからの時代に必要なのはトラブルを起こさないための予防や健康維持・増進だと思い至りました。それを投資型医療あるいは健康への投資という表現をして、今のミナケアという会社を起業しました。

北野
日立は今年の4月にヘルスケアグループとヘルスケア社を新設して、私はその責任者になっていますが、もともとは情報・通信の分野でコンピュータの開発を長年やってきたエンジニアです。コンピュータ屋からすると、MRIやCT、超音波といった医療診断機器をコンピュータとしてどう見るかもありますが、やはり難しいのは臨床での価値をどう高めるかで、それにはお医者さんとの協業が重要であることを日々実感しています。現在、日立は陽子線治療装置や重粒子線治療装置などの大型装置を得意としていますが、治療もさることながら予防が大事だということで、山本さんがおっしゃたような予防にエンジニアの力をもっと注いでいく必要があると考えています。

予防が生み出す価値(2)なぜ、予防が重要なのか

小谷
予防というキーワードですが、山本さんは医療の現場でこの予防についてどのような位置づけ、評価、見方をされていますか。

山本
予防医療については、私が学生の頃、そしていまでも医学部生の間では第一線を退いた医者の仕事という認識だと思います。やはり救命救急とかドクターヘリの方が盛り上がるわけです。「救命救急24時」のようなドラマは出てきても、残念ながら「保健医○○」といったドラマは当分作られなさそうです。

予防医療があまりカッコよくないという話も含めて、医療の概念はまだまだ旧来の考え方や他の業界の常識にとらわれ過ぎていると感じています。例えば、医療コストを考えてみてください。おそらく皆さんのほとんどは、いい医療は高くつくんだという話を素直に受け入れられていると思います。ここで言う「いい医療」とは先端技術を使った医療を指すことが多いですし、確かにその場合は高くつくでしょう。しかし、医療の分野に関しては、いい医療は本来は安いんだということをはっきり申し上げたい。高い医療費がかかるような健康状態になってから始まる医療を「いい医療」と呼ぶのか、新しい、それゆえ高額な技術を使うことのリスクを考えてもそれを「いい医療」と呼ぶのかなどを逆説的に考えていくと、本来はいい医療というのは安くすむものでないとおかしいだろうと。ただ、こうした考え方はまだまだ業界でも一般的ではありません。それから、皆さんと健康の話をしても、「明日はわからないけど、今は元気だから…」と言ってすませてしまうことが多いと感じます。私は「それは違いますよ」とはっきり申し上げたい。今の予防あるいは健診、医学知識など私たちが持っている医療技術を使えば「明日」のことはある程度わかるのです。つまり、社会が今の医療の本質を大きく勘違いしてしまっているのが医療問題の根本的な原因だということです。これに対する具体的な取り組みの例としては、医療従事者や医学生、医療に興味のある方を集めて、月に1回、医療の本来の価値はどこにあるかをテーマにした「山本雄士ゼミ」を開催しています。

小谷
北野さんからも予防に関して、国内外を含めて事例があればご紹介ください。

北野
一例として、日立がイギリスのマンチェスター地域で行っている、主に糖尿病予防に焦点を置いた活動を紹介します。ご存知のように、イギリスは健康保険がなく、医療はすべて国が面倒を見ています。その中心となっているのがNHS(National Health Service)という組織です。そして国民一人ひとりに、いわゆる主治医であるGP(General Practitioner)がいて、まずGPに診てもらう。したがって、行列が長くてなかなか診てもらえないといった悩みも抱えています。そこで、まずやっていることは問診です。糖尿病の予防は問診が非常に重要だと言われています。問診のやり方も技術が必要で、GPや保険担当者からすればものすごく手間のかかる仕事です。ここにエンジニアリングの要素が出てくるわけです。つまり、問診への回答を事前に入力してもらうことで効率を飛躍的に高める仕組みです。実は、このITを使った仕組みには、日立が「はらすまダイエット」という名前で日立の健康管理センタに導入しているシステムの経験が生かされています。具体的には、1日あたりの摂取カロリーを100キロカロリー単位で減らすという運動で、どうやるかは自身の判断で決めることでモチベーションを維持できるようにしているのがポイントです。このITのインフラをNHSの方がご覧になりチャレンジしてみようということで使っていただいています。
小谷
山本さんはいろいろな国の事情を詳しくご存知だと思いますが、予防というキーワードが、今どのようにとらえられているとお考えですか。

山本先進国は予防に注視していますね。その背景は、どこも医療費の高騰に悩んでいて、いかに病気にさせないかを国策として戦略的に考えていることが一つ。もう一つは、経済成長を考えるうえで、若い人が本来なら避けられる病気を患って生産性を失うのは国の損失だという考え方です。日本では健康長寿という言い方をしますが、健康な人生をいかに長くするかという課題に各国が取り組んでいます。先ほど、北野さんからNHSの話がありましたが、NHSのWEBサイトでは、自分の問診票が作ってあり、症状を入れると関連する情報や地域の病院のパフォーマンスなどが出てくるようになっていますね。アメリカの場合は民間型の医療保険会社がメインですから、その保険会社や契約している企業が従業員やその家族の健康づくりが大事ということでさまざまな予防施策に取り組んでいます。以前、ダボス会議で、従業員一人当たり1ドルの健康増進プログラムを実施すると、医療費が約3.3ドル削減されるという報告もなされています。いずれにせよ、健康増進そのものの価値、社会的経済的意義からも予防が重視される時代になっていると考えています。

ビッグデータがヘルスケアにもたらす価値(1)ビッグデータ活用の事例

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さきほど、北野さんからヘルスケア統合プラットフォームのような形で情報を集めて活用する話がありましたが、今、大きなキーワードになっているのがビッグデータだと思います。日経デジタルヘルスでも「医療ビッグデータの萌芽」という特集を8月に執筆しました。データを取るさまざまなセンサ、それを解析する技術は非常に進歩しています。山本さんは、情報活用によってヘルスケアにどのような価値がもたらされるとお考えですか。

山本
ヘルスケアにとって情報は非常に重要です。20世紀の後半くらいから医学論文等の出てくるスピードが速すぎて医師たちが追いつけない、質の高い情報を迅速に集めようにも難しいという時代になっており、どうやって良質の医療を患者さんに速やかに届けるかは、実は、専門職にとって大きな課題となっています。また、ビッグデータでは、統計学的にこれは差がある、意味があると示すことがより簡単になりますが、それが臨床的にも意味があるのか、正しいのかの判断はそれとは別問題であることも多く、そのギャップをどう埋めるかも課題です。

また、情報を活用する場合にミナケアでいつも注意しているのが個人情報の保護と社会資産としての活用という二つのモチベーションを維持することです。その上で、データを解析して人に役立つ情報として還元し、健康が見えてくるような期待感を持っています。

一つの事例をご紹介します。健康診断でコレステロールが高いといわれた人へのアンケートです。治療中であると答えた人は1割、残りの9割の人は治療をしていません。これは翌年も2年後も同じ割合でした。治療した人としない人を比べると、当然治療した人のほうが5倍近く良くなっていて、逆に言えば自然に治った人は5分の1くらいしかいません。これを見て、少し自虐的な言い方になりますけど、病院であんなに忙しくしていた日々はなんだったのかと自問してしまいました。つまり、世の中の患者さんがすべて来ているような忙しさだったつもりなのに、9割の人が病院に来ていなかったことを知ってしまったわけです。

別の事例ですが、1,000人くらいの人に、疾病管理のために病院へ行ってください、とお声がけした追跡調査です。実際に病院へ行かれた人は6割、その約600人が1年間に使われた医療費の合計は約3000万円でした。一方、病院に行かれなかった方々のなかに脳梗塞や脳出血などの重症で入院された人が5人いらっしゃって、その方々だけで医療費の合計が約350万円でした。もちろん、それ以外の病気で医療費がかかった方々もいます。ずいぶん、一人当たりの医療費が違うわけです。常にこうなるということではありませんが、エピソードとして管理をしていた方は安く、そうでない方が高く、しかも健康を大きく害したという数字が出てくるわけです。このように、手を打てばなんらかのメリットが必ずあるとわかっていても動けない。その中でどうしていくのかが予防医療を実現させるための次のステップだと思っています。

ビッグデータがヘルスケアにもたらす価値(2)データヘルスケア計画への取り組み

小谷
ビッグデータについては日立でもさまざまな取り組みをされていますが、ヘルスケアの分野についてご紹介いただけますか。

北野
医療やヘルスケアではビッグデータを使いそうだし、使うだろうってよく聞かれます。確かにMRIやCTなどの画像診断、超音波エコーのような動画診断、さらに24時間のモニタリングなどについてはビッグデータ解析の出番だと思っています。ホットなところでは、いま厚生労働省が健康保険組合に提示しているデータヘルス計画への取り組みです。おそらく来年頃には盛んになると思いますが、日立健康保険組合ではこれに先立ち、糖尿病、高血圧症、高脂血症のいわゆる三つの慢性疾患について、健診データをベースに医療費総額の予測モデルを構築したという事例があります。どのようなことをしたかというと、日立健康保険組合員約20万人のうち約11万人分の2010年から2011年のレセプトと健診データを二つのグループ、Aグループ11万人、Bグループ2万人に分けて、Aグループ2年分の遷移データを使い、医療費総額を予測するモデル構築。そのモデルを使ってBグループの医療費総額の予測データを出し、実際のBグループの医療費総額との誤差を検証したということです。結果、その誤差は5%で、疾病ごとに構築されている一般的な予測モデルの誤差が10%といわれていますので、精度の高い予測モデルといえます。誤差5%というのは小さいように見えますが、いま国民全体の医療費が40兆円になってしまいましたので2兆円に相当します。2兆円はかなり重いですから、まだまだ努力が必要だと思いますが、より高い精度の予測ができれば費用対効果にすぐれた保険事業が可能になると考えています。

また別の取り組みとしては、従来多くの人手と長い時間をかけてやっていた新薬や新しい治療法の効果を見る治験に対して、日立の研究所や医療関係者がすでにある疫学的なデータをうまく使って、エンジニアの力を発揮していろいろなことがわかるのではないかということを一生懸命にやっています。

ヘルスケアをステルスケアに

小谷
それでは少し視点を変えて、最近話題になっているウエアラブルについて考えてみたいと思います。2010年に「ポケットドクター」という記事を書いたことがあります。日常生活の中であたかもお医者さんがポケットにいるように自分を見守ってくれて、時には適切なアドバイスをしてくれるイメージです。こうした夢を実現してくれるテクノロジーがウエアラブルではないかと思います。たとえば、腕輪型の活動計、腕時計型の端末、さらにグーグルが涙の成分から血糖値を測定するというコンセプトで開発しているコンタクトレンズ型のデバイスなど枚挙にいとまがないくらいです。山本さんはこうしたものを予防、ヘルスケアに活用していくことをどのように見られていますか。

山本
すごく期待している分野ですね。糖尿病の人の血糖値測定を見ても、これまで病院に集約していた検査がどんどん病院の外、日常生活の中に浸透していく。測定技術のコモディティ化の流れでウエアラブル・デバイスを考えれば、なにもその活用領域を予防や健康増進に限る必要はないと思います。ただ、現在のウエアラブルのほとんどはまだポータブルのレベルです。臨床の現場ではペースメーカーのような体に埋め込む機械、私たちはインプランタブルと言いますが、そうしたデバイスも使われています。さらに進めると、私などはステルスケアという言い方をしますが、そもそもセンシングのデバイスを持っているかどうかもわからないけれどもモニタリングやケアされているという状況も考えなくてはいけないと思っています。

そうすると、モニタリングやセンシングの結果を次のアクション、医療業界ではインターベンションと言いますが、どういう介入・働きかけをするかというところまでつなげていくビジネスモデルを描かないと本当のバリューは出ないと思います。それこそが、ヘルスケア関連のウエアラブル・デバイス産業が成長産業になっていき、ソーシャルコスト削減ができるかどうかの試金石だと考えています。

小谷
もちろん日立でもウエアラブルなものというのは視野に入れられていると思いますが、北野さんの見方、あるいは事例があればお教えいただけますか。

北野
実は、日立にもウエアラブル・デバイスはあって、もう既に三代目になりますが、30から40件くらいの研究機関や健康保険組合で使っていただいています。腕時計型なので山本さんのお考えからするとポータブルですが、結構いろいろなことがわかるようになっています。中に加速度センサが仕組まれていて、ちゃんと寝ているとか、歩行しているといったデータを1年単位で取ることができますので、行動様式をとらえるということでは非常にいいツールと言われています。またメタボリックシンドロームの改善やアスリートの運動管理などにも応用されています。糖尿病の治療や情報管理に関しては、ヘモグロビンA1c(HbA1c)やグルコースなどについて侵襲(*)モニタリングが行われていますが、最近では非侵襲(*)という形の光学的アプローチでデータをとらえようという動きが一気に出てきています。ただ、成分要素を測るとなると結構難しいというのが実感ですが、相当な勢いで電機メーカー各社がやっていますので、これから次々と出てくるという期待はあります。

*侵襲:生体を傷つけること。非侵襲:生体を傷つけないこと

ソーシャルホスピタルの入り口

小谷
ウエアラブルは私たちと病院をつなぐものだと思いますが、ソーシャルホスピタルの実現を考える上で、医療のインフラと商業のインフラをちょっと比較してみました。病院は頻繁には行かない非日常で、商業で例えれば百貨店のようなところではないかと。これに対して商業での日常はいわゆるコンビニではないかと思います。では、コンビニに相当する医療のインフラは、私は薬局ではないかと考えています。いまコンビニの数は全国で4万店舗以上ありますが、薬局はそれより多くて5万店舗以上あります。薬局薬剤師の数は医師が約10万人に対して約15万人と言われています。そういう意味ではソーシャルホスピタルの入り口としては十分にポテンシャルがあると思いますが、山本さんは薬局のこれからの役割をどのようにとらえていらっしゃいますか。

山本
医療やヘルスケアのエントリーポイントが増えることに意味があると思います。これからは処方箋が必要な薬の範囲も見直される時代がくるでしょうから、そうなると薬の入手先は薬局だけでなくコンビニや駅でもいいかもしれません。その時に重要なのは、必要なロジスティックなどをどう構築するかです。新しいビジネスモデルを支えるにはそのビジネスを支えるビジネスネットワークを築く必要があります。薬局の使い方をどうするかを今の枠組みで考える以上に、ソーシャルホスピタルという視点での必要なモデル、それを支えるネットワーク、そこで提供するビジネスバリューは何かというところから考えていかなければならないわけで、それを構築して産業として確立するには、たぶん1~2年で済む話ではなくて、5年、10年、どうかしたら20年くらいはかかるかもしれませんね。

小谷
なるほど。北野さんにおうかがいしたいのですが、最近、血液を採って簡易的な診断をする、いわゆるグレーゾーンの領域を政府でも産業として拡大推進しようという話があって、企業も薬局を巻き込みながらそうした市場をつくっていくことを考えていると思いますが、日立ではどのように見られていますか。

北野
日立は一般的なドラッグストアというより調剤薬局との関係です。今、小谷さんがおっしゃったのは、今年(2014年)4月に解禁となった薬局店頭での自己採血による血液検査ですね。自分自身で結果を判断するしかないのですが、それでも数は結構増えていると聞いています。最初にトライしたのは東京の足立区と徳島県ですが、とくに徳島県は糖尿病の疾患、死亡率が全国の中でも飛びぬけて高いからだと思います。グレーゾーンの話ですけれども、薬剤師がある程度健康指導ができれば、病院よりは行きやすいですからチャンスはあると思っています。それに(2014年)11月には薬事法の改正が実施されますので、その波に乗っていけるかもしれないと思っています。

ヘルスケアで日本を元気に

小谷
11月の改正では薬事法という名前から「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に変わります。そのポイントは医薬品と医療機器を分離してそれぞれに適した条項で見ていくということですが、その中の一つのトピックスとして、医療機器の範囲にソフトウェアが入っていることだと思います。たとえば、スマートフォンのヘルスケア・アプリケーションはこれまでの薬事法ではグレーゾーンで、二の足を踏む企業もあったわけです。これを明確にして、医療用に使用するアプリケーション開発を加速させて産業を盛り上げる方向へ転換していく施策でもあります。山本さんはどのように評価されますか。

山本
ある時期を境に、医療が成長産業である、日本経済を牽引するエンジンの一つであるという流れ、健康長寿を伸ばす市場を振興していこうという流れが生まれており、そのことは非常に評価しています。ただし、地域包括ケアのような考え方は昔からあったのに、いまだにうまく機能していない。これは従来型の規制が邪魔をして、あるべき姿のビジネスに必要な新しいビジネスネットワークが築けない、モデルが組めなかったからです。規制緩和が一概にいいとは思っていませんが、規制の更新によって何かを可能にしていくのは重要です。医療ですから、当然、質の担保は絶対で、そのうえで企業が切磋琢磨し、競争力を強化していけるようにやっていただければ、私としては一番望むシナリオです。

小谷
日立でもこうした国の法改正や制度は事業計画とダイレクトにかかわってくるわけですが、ヘルスケアの分野でそういった新しい取り組みがあればお教えください。

北野
いま山本さんの話に出てきた地域包括ケアについて紹介したいと思います。団塊の世代が後期高齢者になる、いわゆる2025年問題に関連して、政府が一次医療圏、二次医療圏、三次医療圏に向けて予算をつけ、地域包括ケアを推進する動きが出ています。ご紹介するのは、茨城県笠間市での介護の事例です。笠間市は2年前に「健康都市かさま」を宣言され、介護に対しても非常に熱心に取り組まれています。介護にはケアマネジャーだけでなく介護施設、自治体の担当者などいろいろな方が参加しますので、情報共有が重要なポイントになります。日立はこのシステムをお手伝いさせていただきました。共有する情報としては、緊急連絡先、介護認定のレベル、普段の健康診断の結果、お薬手帳、そしてケアのプランと状況など当然のものばかりですが、クラウド環境で、見たい時にすぐに見ることができるので非常に喜んでいただいています。

小谷

ITを活用したヘルスケアの社会実装の例だと思いますが、ミナケアでもそういった事例があればご紹介ください。

山本
三つほど簡単に紹介します。一つは団地の高齢者の方々を対象に、多くの落語家さんが所属している松竹芸能さんとアスリートの為末大さんのトレーナーチームと組んで行っている健康増進プログラムです。落語家さんを呼び水に高齢者の方々に集まっていただき、ひとしきり笑ったあとに、筋トレなどのトレーニングを行っています。二つ目は、横須賀市での事例で、国民健康保険と一緒にデータを活用しながら見逃されそうな健康リスクをどうやって把握し、介入していくかを解析・検討するプロジェクトを走らせています。三つ目は、コンビニを使ったヘルスケアの例で、ローソンさんのアプリケーションの中でご本人の健康リスクに関する情報などを入れていただくと、お奨めできる商品が出てくるといった形のものです。いずれも良好な実績が出ています。繰り返しになるかもしれませんが、これからの予防も含めた医療のあり方については、医療従事者だけで描ける時代ではありませんので、ぜひ皆さんとともに新しい価値を探求していければと思っています。

小谷
北野さん、山本さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

画像: ヘルスケアで日本を元気に

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